第2章 情炎【轟焦凍:裏】
将来の夢なんて、
ヒーローになる事以外、考えた事もなかった。
授業が終わり、寮へ帰る前に実家に向かう。
“明日、大切な話があるから一度帰ってこい”
昨日、電話で親父に言われた言葉が耳に残っている。
随分焦ってたけど、なんなんだ…?
帰れば事情もわかるだろうと思い、特に聞き出す事はしなかった。
「ただいま。」
家の玄関に入ると、見慣れないローファーが置いてある。
大事な話があるって言ってたけど客か…?
自分には関係ないだろうと、気にする事もせず、リビングのドアを開ける。
「おぉ!帰ったか焦凍!」
「あ…えっと、お邪魔してます…。」
そこには、満面の笑みの親父と、苦笑いのクラスメイトの姿があった。
「さん、実にいい子じゃないか!」
「そんな事ないですから……」
「そんな謙遜する事ない!焦凍には勿体ないぐらいだ!」
上機嫌な親父が、なんの話をしているのか理解が出来ず、呆然と立ち尽くす。
「焦凍、さんは、お前の許嫁なんだ!」
……許嫁?
この時代にこんな事あるか……?
「でも、正式に決まったわけじゃ…無いんですよね…?」
が聞くと
「いいや。昨日はどんな女性かと不安もあったが、ヒーロー志望の優秀な女性で、こちらとしては是非、お願いしたい!」
親父のその言葉に、更には困ってる様子だ。
そんなに嫌か……。
それはそうか……。
「これから宜しく、さん!」
勝手に話を進める親父の話を流しつつ、俺達は遅くなる前に、寮へ戻る事にした。
帰り道
「私も両親から昨日話を聞いて……轟家って、やっぱり轟くんだよね……。」
「俺なんて、許嫁の話をさっき知った。」
「そ、そうなんだ……。」
気まずい雰囲気になってしまい、2人で黙ってしまう。
日が落ちた事もあり、の表情がわからない。
少し歩くと
「……あのね、許嫁の事、クラスのみんなには秘密にしておいて欲しいんだ……。」
「俺は別に構わないが……?」
「あ、ありがとう…!ほら、轟くん女子から人気あるし、ファンクラブだってあるし……心変わり、するかもしれなし?」
は一生懸命説明しているが、素直に受け取る事が出来ない。
きっと俺はが許嫁で凄く嬉しいんだ。
それなのに……