第19章 可愛い恋煩い
■緑間真太郎の場合
山田が学校に来るようになって3日。本人は至って元気そうだが、真ちゃんと何かあったのか2人はギクシャクとしている。
今日だってそうだ。
いつも居残り練習にまで残る山田が、部活が終わった途端、用があるとかでさっさと帰って行った。
喧嘩でもしてんの?と真ちゃんに聞いても山田に聞いても何もないよ、の一点張り。
先輩たちも不自然な2人に気付いたようで、部室で制服に着替える真ちゃんに大坪さんが声をかける。
「山田と喧嘩でもしたか?」
「いいえ、してないです。」
「じゃー、何でオマエらそんなによそよそしいんだ?」
大坪さんの問いに、真ちゃんは答えず、宮地さんが更に質問を被せる。
「はっはーん。さては、オマエら一線越えたな?」
「・・・・・。」
「えっ、マジなのかよ、真ちゃんっ!」
黙りこくる真ちゃんを前に、先輩たちと目を合わせる。真ちゃんはいや、キスしただけです、と小さく申し訳なさそうに呟く。
んだよ、驚かせんなよ、と初めこそ思ったが、ただの幼なじみだった2人が、キスをしたとなればそれはそれは大問題だ。
部室の鍵を閉めながら宮地さんがわかりやすく落胆する。
「まじかよー、狙ってたのに。」
「黙れ、宮地。で、なんでよそよそしくなっちまうんだ?付き合ってんだろ?」
「・・・・・。」
大坪さんの質問にまたもや黙りこくる真ちゃん。
おいおいおいおい、まさか。オマエ、、
「「「無理矢理キスしたのか?」」」
3人の声が見事に揃った。
が、真ちゃんは顔を真っ赤にして弁解する。
「いやいやいやいや、無理矢理ではないのだよっ!でも同意していたかと聞かれると、・・・難しいところです」