第16章 オレはオマエと
『あれは赤司じゃなかった』
花子の家に帰ってきて落ち着いたところで起きたことを全て聞いた。
花子のことはほとんど知っていると思っていたが、知らないこともあった。
「赤司が洛山にオマエを誘っていたなど、オレは聞いていないのだよ」
『・・・言ってないもん。』
分が悪くなったのか花子は伏し目がちに話す。
「しばらく赤司とは会うな、連絡も取るな」
『・・・分かってるよ、もう。』
本当に分かっているのだろうか。
さっきまで泣いていたくせに、面倒臭そうにため息を漏らしながら返事をする花子。全く、こっちがため息を吐きたいくらいだ。
「1つ確認したいのだが、」
『ん?』
「赤司のいる洛山じゃなくて、オレのいる秀徳で日本一になる。本当にそれでオマエは良いんだな?」
花子はあのときの約束を忘れていないとでも言うかのような顔つきでオレを見つめ、深く頷いた。
「オレが赤司を説得させてみせるのだよ」
『ムリだよ、赤司はもう昔の赤司じゃ』
「そんなこと百も承知だ。それでもオレはオマエと」
日本一になりたい。
オレがそう願うように、赤司もそう願い、オレが花子を想うように、赤司も花子を想っていたのだろうか。
その真意はオレには分からないが、こうなってしまった以上、ハッキリさせなければならないと思った。
例え赤司の命令が絶対だとしても、そう易々と花子を渡せない。