第16章 オレはオマエと
「“オマエ花子に何をしているんだっ!”」
花子が部屋を飛び出してからどれ程の時間が過ぎただろうか。
冷静になったところでもう1人のオレが僕に怒る声が聞こえてきた。
5年近く想っていながら何も言えなかったヤツが、今更なんだって言うのだ。むしろ僕に感謝するべきじゃないのか?
「“花子は泣いていた。オレはあいつをずっと大切にしてきたつもりだ。なのにオマエは、”」
うるさい、消えろ!
もう1人のオレを強制的に僕はシャットアウトした。
殺気だった感情を落ち着かせるために冷めたコーヒーを飲もうとしたとき、携帯がなった。予想通りだ。
「かかってくると思っていたよ、真太郎。」
「そうか、なら話は早いな」
花子のことだ。
きっと泣いて真太郎に助けを求めたのだろう。
若しくは今日会うことを真太郎が知っていたのなら花子の帰りを待っていたかもしれない。
まぁ、そんなの今となればどうでもいい。
「オマエと少し話がしたい、真太郎。」
僕の誘いに2つ返事で了承した幼なじみ兼恋敵は、30分も経たない内に、ここへやってきた。
(「久しぶりに会えて嬉しいよ、真太郎」)
(「あぁ、オレも嬉しいのだよ、赤司」)