第1章 責任感じてるんスよ
まさか、誠凛と海常がこんな競る試合をするとは思わなかったし、無論黒子が勝つとは微塵も想定していなかった。
それだけに流石の黄瀬も堪えるものがあったのだろう。外に出れば、ソイツは水道で汗を流していた。
別に黄瀬と特別仲が良かった訳ではないが、声をかけるかかけないか迷った末に、負けてウジウジとバカみたいに涙を流す黄瀬に嫌気がさし、気付いたときには口を開いていた。
「オマエの双子座は今日の運勢最悪だったのだが、まさか負けるとは思わなかったのだよ。」
どいつもこいつも気に食わない。
負けて泣くくらいなら、“人事を尽くせ”と本気でオレはそう思っているし、何度もみんなに教えてやったつもりだ。
しかしそれはつもりであったと、黄瀬を見て痛感する。
“バカめ”
そう黄瀬に直接言いたかったが、そこまでガキじゃないオレはその一言を心の中に留めた。
「見に来てたんスか、緑間っち。」
「まっ、どちらが勝っても不快な試合だったが。サルでもできるダンクの応酬。運命に選ばれるはずもない。」
そこまで言うとあからさまに口を尖らせ、嫌な顔をした黄瀬。女子みたいなその顔に少しばかりイラつくのは、中学の頃から変わらない。
「中学以来っスね。お久しぶりっス。テーピングも相変わらずっスねー。つーか、別にダンクでもなんでもいいじゃないっスか、入れば。」
「だからオマエはダメなのだよ。」
これだから、1にダンク2にダンクの考えしかないオトコは嫌いなのだ。
「近くからは入れて当然、シュートは遠くから決めてこそ価値があるのだ。」
そう、2点と3点では雲泥の差なのだ。
中学の頃から何度も何度も、オマエらの耳にタコができる程口酸っぱく言ってきたじゃないか。
「人事を尽くして天命を待つ、ということわざを習わなかったか?まずは最前の努力、そこから初めて運命に選ばれる資格を得るのだよ。」
たまたま持ってきていた、緑色のタオルを黄瀬に向かって投げ渡した。