第48章 カッコわりぃとこ見せてんじゃねぇぞ
「秀徳はまだ死んでいない。勝負はこれからだ、赤司。」
「想定以上だよ、真太郎。そうでなくては。」
残り4分45秒 60-71
今までずっと涼しそうな顔をしていた赤司の顔色が変わったのをオレは見逃さなかった。ディフェンスについた瞬間、刺すようなその鋭い目に負けないようにしっかりと地に足をつける。
「無駄だ、どけ。」
たった一言。
たった数歩赤司が歩いただけで、自分の足がもつれ気が付いたときにはコートに尻もちをついていた。
「“僕”の命令は絶対だ。」
・・・まだだ、諦めるな。
倒れることなど何も恥ではない。そこから起き上がらないことこそ、恥!!
そう自分に強く言い聞かせ、シュートモーションに入る直前の赤司になんとか追いつくが、インサイドから入ってきた8番にボールが渡る。
間に合わない。
そう思ったと同時に、ダンクを決めようとする相手へと立ち向かう大きな大坪さんの背中が目に入った。大坪さんがそのダンクを叩き落として阻止することに成功すると、今度はそのボールを高尾が追いかけた。それを視認したオレは高尾を信じた。
以前悔負した試合でどこかの誰かが言っていた、信じるということの本当の意味をオレは今分かったような気がした。
だから、跳ぶ。
そこに高尾からのパスが絶対に来る、そう信じて・・・。
「任せたぜ、真ちゃんっ!」
予想通り高尾からのパスは寸分の狂いもなくドンピシャで届き、みんなの想いを乗せたそのボールは、これまた寸分の狂いもなくゴールへと吸い込まれて行った。
それでもまだある点差を縮めるために、ディフェンスをオールコートマンツーに切り替え、尚且つ赤司にはオレと高尾でダブルチームでたたみかける。
すると赤司は一瞬鼻で笑うと、オレたちから距離を取る。
そしてあろうことか、赤司は自分のゴールへとシュートを放ったのだ。それはつまり自殺点であり、分かりやすく言えばオウンゴールだ。
「は?何を考えている?」
オレからこぼれ落ちた言葉は、このコートにいるみんなと相違ないだろう。それくらい意味の分からない、決して有り得ないプレイだった。
「“僕”がいつ気を抜いていいと言った?試合はまだ終わっていない。」
赤司が他の4人に言い放ったその声は、荒らげてなどいないのになぜか恐ろしかった。