第48章 カッコわりぃとこ見せてんじゃねぇぞ
“そのうち思わずうなるようなパスしてやっから覚えておけよ”
オレがそう言ったのはまだ春の頃。
居残り練習をしているときで、真ちゃんの近くにまだ少し挙動不審な山田も隣にいた。あの日のことは今でも鮮明に思い出せる。
「いや、言ったけどよ・・・」
『え、真ちゃん正気?』
「無論これで赤司に勝てるなどと思ってはいないが、これが出来なきゃ勝ちは・・・まずないのだよ。」
そう真ちゃんに言われたのは夏休み明けの居残り練習後の帰り道。提案されたのは耳を疑うようなパスだった。
「先にオレが3Pのシュートモーションに入る。そのてっぺんに高尾、オマエがどんぴしゃでパスを入れてくれれば、あとはオレが必ずシュートを決める。」
『・・・いやいや、そんな無茶苦茶な。』
「入れてくれればって言うけど、そんな簡単にできるわけ・・・、」
「・・・。」
無謀だと思った。
何を馬鹿なことをとも思った。いくら真ちゃんでもそんなことできるわけないだろうよ、と。でも、絶対の自信を持ったシュートしか打たない真ちゃんが、こんな賭けにまで出なきゃ勝てないんだと言わんばかりのその目と視線がぶつかると、否定してきた言葉たちは喉の奥へと沈ませる他なかった。
そして、今。
真ちゃんの言っていた意味を漸くきちんと理解し、お互いを信じて練習してきた成果を、(できれば使いたくはなかったが)使うときがきた。
「頼むぜ、真ちゃん。」
ボールを持っていない真ちゃんが急にシュートモーションに入り跳ぶ。予想通り赤司は一瞬たじろいだ。その瞬間をオレは見逃さなかった。
そしてオレの投げたボールはシュートモーションのどんぴしゃに入り、真ちゃんに放たれたシュートもいつも通り決まったのだ。
「このチームに人事を尽くしていない者などいない。」
「そこはさー、ナイスパスとかよくやったとか褒めてくれないわけ?」
「出来て当たり前なのだよ。」
「んだよ、これでやっと相棒して、」
「バカめ。」
「は?」
「オマエのことなど、随分と前から認めているに決まっているのだよ。」
なんて柄にもなく真ちゃんが笑ってハイタッチをするもんだから、思わずオレの口角もあがる。そして同じやり方で4本連続真ちゃんは3Pを決めた。