第48章 カッコわりぃとこ見せてんじゃねぇぞ
『だって・・・私汚いんだよ?』
「真ちゃんがそう言ったか?」
『・・・言ってない。』
「じゃあ、真ちゃんが心の中で山田のこと汚いとか思ってるかもって思うわけ?」
『・・・・・、』
「山田のこととなると全部どうでもよくなって、すぐ嫉妬して、あのクソほど重たぁ〜い真ちゃんが?それが理由で嫌われると思ってんの?本気で?」
『・・・っ、意地悪だよ、高尾・・・。』
そう言うと山田は頬を膨らませ、目にはうっすら涙を浮かべていて。
「っ!わりぃ、泣かすつもりじゃ・・・、」
惚れた弱み、とは正にこの事だなと痛感する。こんな顔をされちゃ言いたいことも言えやしないし、仮にオレらが付き合ったら、きっとオレは山田の言いなりで・・・。
でもそんな関係性も悪くないよな・・・なんて今は妄想して現を抜かしている場合じゃあない。そしてそんな仮など決してやって来ないだろうと淡い期待をした自分に釘を刺す。
大きく頭を左右に振って現実に戻る。
『分かってるよ、真ちゃんはそんなこと言わないって。むしろいっつも可愛いとかキレイだねって言ってくれる。』
「お、おう。」
あの真ちゃんでもそんなことを言うのか。
一体全体どんな顔をして言ってるんだろうか、と想像するとちょっと可笑しくて、思わずニヤニヤが止まらなくなる。そんなオレには目もくれず、山田は話を続ける。
『上手く言葉に出来ないんだけどね、赤司と灰崎のこと綺麗に終わりにして。スッキリした状態で、もし真ちゃんがそれでも好きって言ってくれるなら、』
「バーカ」
『・・・っ』
「本当に山田ってバカだよな。真ちゃんナメんなよ?どんな山田だって好きに決まってんじゃん。」
しょうもねぇな、とは思ったが、それを言うと泣かせてしまうかもしれないが故に、その言葉たちは綺麗に飲み込む。
そんなことより気になったのは赤司のことで、まさかと思い聞いてみると、灰崎と会う前に赤司ん家に一人で乗り込んだと言う始末で。
「オマエのそういうところ。危ねぇからやめてくれよ。」
真ちゃんもこりゃ心臓が幾つあっても足りねぇなと少し同情した。そして無事に山田を送ってオレの任務は完了した。