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緑間のバスケ【黒子のバスケ】

第44章 忘れさせてやる






『・・・はぁっ・・・んっ、・・・た・・かおっ、』


「もう大丈夫だからな。落ち着いて深く呼吸しろ、」



嗚咽混じりに泣きながら震わせる山田の肩を摩り続ける。乱れた制服の上から自分のジャージを脱いで羽織らせてやり、そのやり取りを冷ややかな目で見下すソイツを睨みつける。




「お〜こっわ。ちょーっと遊んでやっただけじゃねぇか。」


「は?コイツ嫌がってただろうが。オマエふざけてんのか?」


「なるほどね・・・。オマエも山田に気があるってことね。」



・・・山田を知っている?
会話にならないソイツがどこぞの選手なのか最初こそ気付かなかったが、点と点がひとつの線となり繋がった。



「もしかしてオマエ・・・・・帝光中だった灰崎か?」


「ははっ、オレのこと知ってくれてんの?嬉しいじゃーん。」



なんてこの状況で舌を舐めずりながら笑う灰崎は、相当狂っている。


本音を言えば目の前にいる忌忌しいソイツをぶん殴ってやりたかったが、試合を控えた選手が暴力沙汰なんてご法度だ。それより今は、腕の中で震えながら泣きじゃくる山田を離したくもなかった。




「・・・大丈夫。もう大丈夫だからな。」



初めて見る山田の弱った姿に、なんて声をかければいいのかも解らないオレは、ただそんな言葉を並べて抱きしめてあげることしかできなかった。


・・・オレじゃなくて真ちゃんだったら。
もっと山田の不安を取り除けるような何かをしてあげられるのだろうか。


例えば好きだと愛をささやいたり、例えばアイツとのそれを上書きするような食むキスをしたり・・・。


真ちゃんと同じようにこんなにも山田を想っているのに、彼氏じゃないオレにその行為たちは決して許されない。


その事実がどうしようもないくらいに悔しくて、行き場のない想いをしまい込むようにさらに強く山田を抱き寄せた。




「イチャついてるところ悪ぃんだけどさ、オマエ邪魔だから一発殴らせろよ?」



と、理不尽な物言いをした灰崎が拳を振りかざす。山田を抱いていて避けられそうにないと諦めたオレは目を瞑り、その痛みを受け入れる準備をした。

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