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緑間のバスケ【黒子のバスケ】

第42章 オレが、奪うぞ






「好きな人ねぇ・・・。今は当分そういうのいいかな。」


『え、どうして?』


「そりゃあ今は、バスケしてる方が楽しいからね。それに、ここで頑張んねぇでオマエに洛山行かれても困るし。」


『おっ、頼りにしてますよ!』



なんて山田は何の気なしにニコリと笑う。好きな人がいるかという質問に対し咄嗟に想いを隠した。


それにはいくつか理由があるが、強いて言うなればこの生温い関係をいつまでも続けていたいからだ。もちろんフラれるのも嫌だが、それ以上に山田との関係が崩れてしまうことのが何倍も嫌だった。



そのあとはお腹が空いたと山田が煩かったので、途中のコンビニで肉マンを買って食べた。その間は流行りのマンガの新刊がどうだったとか、宮地先輩がまたオンナの子にフラれたとか身のない話をした。


真ちゃん抜きでこんな長時間山田と一緒にいるのは、実に初めてのことで、ついつい本当の恋人同士なんじゃないかと錯覚してしまうほどだった。


それでもその夢のような時間には限りがあって。
気が付いた時には既に山田の家に着いていて、彼女は首に巻いていたマフラーを何の迷いもなく外す。そしてそれを返された瞬間に夢のような時間から目覚め一気に現実に引き戻される。


オレと山田はただの部活の仲間だ。そう言い聞かせながら、返されたそれを自分の首に巻き付ける。



『あ!やっぱりバレてない。』


玄関から見える真ちゃんの部屋の電気を確認すると安心したかのように彼女は肩を撫で下ろした。




『高尾、明日真ちゃんに言わないでよね。』


「言わねぇよ。てか言えねぇよ。バレたら間違いなくオレ殺られるからね?」


『確かに。じゃー2人のヒミツね。』



人差し指を1本口の前で立てて笑う山田は、やっぱり恐ろしいくらいにあざとい。早く行けよ、とオレが言えば可愛い笑顔を振りまいて家の中に入っていた。


山田の家を背にしてから、少し歩いたところで立ち止まる。家を出たときに気付いた違和感を、このまま気付かなかったことにするか否か迷っていたが、それさえもなんだかバレているような気がして声をあげたのだ。


「いつまで隠れてんだよ・・真ちゃん。」


嫉妬深く心配性なこのカレシが、黙っているはずがないのだ。


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