第42章 オレが、奪うぞ
「いつから気付いていた?」
「オレん家出たときかな。背中に視線感じて、歩いても歩いても背中に穴が開きそうだったからよ。真ちゃんだろーなって。」
「フン、なるほどな。」
真ちゃんは、やはり山田がわざと教科書を忘れたことに既に気がついていた。
「帰る直前、花子がキョロキョロ周りを見ながらカバンから教科書を出したのをさりげなく見ていた。それに、あの寝起きの感じからみて話を聞いていたんだろうなとは思っていたのだよ。」
「そんな山田はウソが上手くなったって喜んでたけどな。」
「バカ言え。オマエは知らないだろうが、帰り道の不自然さと言ったら、そりゃあもう酷いものだったのだよ。」
「あーなんか想像つくわ、それ。」
山田が必死に真ちゃんの目から逃れようと試行錯誤している様子が簡単に目に浮かんだ。
「てか、気付いてたのになんで山田1人で来させたんだよ?」
結局こうやって山田にバレないようにコソコソと後をつけて来るくらい心配なら、始めから一緒に着いて来れば良かったじゃないかとオレは思ったのだ。
ただ、このオトコはそうは思わなかったようで、嘲笑うようにひとつため息を吐いた。それがなんだか少しだけ癪に障るのは、自分の想い人と想いを通わせているからだろう。
「んだよ、カレシの余裕ってやつか?どうすんだよ、部屋ん中でオレが山田にあーんなことやこーんなことしてたら。」
「余裕なんてないさ。ただオレは、」
「ん?」
「オマエを信用している。それにオマエは花子の嫌がることは絶対にしないだろ?」
なんて山田と同じことを言うもんだから、思わず吹いてしまった。
「ったく、オマエら揃いも揃ってオレを買いかぶり過ぎなんだよ。」
そうして、止まっていた足は自然と互いの家へと向かい歩き始めた。
(「まぁでもあと5分遅かったら、」)
(「なになに、」)
(「家に乗り込んでたかもな。」)
(「こっわ!コイツこっわ!」)