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緑間のバスケ【黒子のバスケ】

第41章 オマエの隣にだって






“オレが引き付けてパスを出します。”


真ちゃんの言ったあの一言が、何度も何度も頭の中でリフレインされては思わず頬が緩む。



「そのヘラヘラした顔はどうにかなんないのか?」



真ちゃんを控え室に残し扉の外で待っていると、同じく真ちゃんを待っていた高尾が、バカにしたような顔でこちらを見る。



『うるさいな〜っ!』


「でもまぁ、ビックリするよな。あのプライドの塊みたいなヤツが?ってオレだって自分の耳を疑ったもんなぁ。」


『それ、真ちゃんに聞こえたら怒られるからね。』



気をつけなよ、と付け足せば高尾は気のない返事をひとつした。


でも実際には、私も高尾と同じことを思っていた。口にこそ出さないが、あのプライドの高い真ちゃんがチームの為に、勝つ為に、一人で戦うことを辞めようとしているのだ。


そんな姿を目の当たりにして、これは夢なんじゃないかと思わず隠れて自分の太ももあたりを抓ったりするくらいに私も驚いていた。





「なぁ、オマエ手首どうしたんだよ?」



真ちゃんの変化に喜んでいるのもつかの間、高尾に指摘された手首に視線を落とせばそこは赤く擦れていた。言われるまでその傷の存在に気付かなかったが、もちろんその原因は容易に想像がついた。



そうこれは、間違いなく昨日のネクタイの痕だ。その刹那、昨日の堪能的な情事が走馬灯のように脳内を駆け巡り、顔に熱が一気に集中した。



『ちょっとね。でも大したことないから。』



慌てているのを悟られぬよう、肘まで持ち上がっていたジャージの袖を下ろし手首を隠した。



「ふーん、昨日はお愉しみだったってことね。」


『ば、ばかっ!そんなんじゃないよっ!』


「そんなムキになんなよ。」



意地悪そにニヤリと笑った高尾につい声をあげると、高尾は自分の鎖骨あたりを何回か小突いた。意味が分からず首を傾げていると、彼はわざとらしく耳元で囁くのだった。



「痕、残ってんぞ。」


『なっ、』


ジャージを深く羽織り直し、首周りを大袈裟に隠してみるも、時すでに遅し。“お盛んね”なんて笑う高尾の肩にパンチしようと拳を握るも、後ろから大坪さんに呼ばれ、その拳は行き場をなくした。


「そろそろ入場だ、緑間に声掛けてくれ。」


深呼吸をひとつして、真ちゃんのいる控え室の扉に手をかけた。

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