第6章 秀徳に行かないか
準決勝オレたちは圧倒的な強さで勝利した。
「こっからまた休憩挟んで決勝戦って、どんだけバスケ好きなのよ、オレら。」
両手を上げて欠伸をする高尾は続ける。
「けどま、良かったじゃん、来たぜ、誠凛。」
そう誠凛高校は王者正邦に勝ったのだ。
「見れば分かるのだよ。」
『あれ、真ちゃん嬉しそうだね。』
「バカめ。嬉しくなんてない。あいつらに分からせてやるまでだ。」
誠凛なんかにオレたちは負けない、とな。
ロッカールームに戻り、作戦を考え直す。北の王者の敗退は番狂わせそのものだった。
時間はどんどんと過ぎていき、気付けば10分前になっていた。
「よし、行くぞ!」
キャプテンの声でみんな一斉にコートに向かったが、オレはベンチに座ったまま。
「緑間。」
「すいません、先に行ってください。」
すぐ来いよ、そう言い残し、キャプテンもコートに向かった。ロッカールームにはオレ1人になった。
柄にもなく感情が高ぶっていた。
花子の言った通り、本当は黒子と試合できるのが嬉しいのかもしれないという気分にさえなってきていた。
この高揚した感情の正体は分からないが、もうそんなのはどうでも良い。
シューティングを欠かした日はない。
練習も手を抜いたことはない。
左手の爪のケアもいつも通り。
今日の占い、かに座は1位、ラッキーアイテムのたぬきの信楽焼も持ってきている。
バッシュの紐は左から結んだ。
・・・・・人事は尽くした。だから負けない。
そう思いロッカールームから出ると2人の姿がそこにはあった。
「おっせーよ!」
『先輩たち、先行っちゃったよ。』