第35章 幼なじみをやめたいんだ
宮古と付き合うことで、花子を守ることができるならオレはそれで構わない。オレだけが我慢をすればそれで済むのだ。
誰にも理解されないであろうこの酷く歪んだ愛し方が正しいことであると信じて疑わなかった。
しかし付き合うことだけでは、彼女の要求は終わらない。
「なぁ花子、」
『ん?』
先程渡したバッシュを気に入ってくれたのか、履いては眺め、脱いでも眺めを繰り返す花子は視線をずらすことなく返事をする。
「オレさ、」
『んー?』
「・・・幼なじみをやめたいんだ。」
『・・・え?』
宮古は言った。極力花子とは仲良くしないで欲しいと。
「もう花子と緑間と3人で一緒に帰ったり、公園でバスケするのも、多分できない。」
『・・・・・。』
「これからもし花子が困ることがあったら、そのときはオレじゃなくて緑間に助けを求めるんだ。」
冷たく花子を突き放すことしかできない自分が情けなくも切ない。幼なじみではなくオトコとして花子の隣で守ることができたら、どれだけ幸せか。ここ最近何度もそんなことを考えた。
でも今ここでオレが本当の想いを伝えても花子はオレを選ばない。どんなにオレが救世主のように彼女を助けても、花子の隣で花子を守れるのはオレじゃなくて結局緑間。
こればかりはどう戦っても緑間に勝てる勝算がない。ならば負けを認めてしまうくらいなら、いっその事なかったことにしてしまえばいいのだ。
弱くてかっこ悪いオレはこの感情に蓋をすることで自分を保った。
そのくせ自分を犠牲にしてまで花子を守りたいだなんて、結局のところ自分の感情に蓋をしきれない愚か者だ。そしてこれさえも愛所以の行動だと思っているのだから、もうオレは本当にどうしてしまったのか自分でも理解できない状況に陥っていた。
つまり、それほどオレは花子が好きだったのだ。
「恋がこんなにも心を掻き乱すものだと、オレは知らなかったよ。」
『赤司は素敵な人に出会えたんだね。』
優しく微笑む花子に、オマエのことだと言いそうになる口を強く結んだ。