第35章 幼なじみをやめたいんだ
『でも、やっぱりこんな高価なもの貰えないよ。』
お小遣い貰ったらお金返すから、と花子は眉毛を下げて笑う。
「花子ならそう言うと思ったよ。だから、これは少し早い誕生日プレゼントってことで。そのまま受け取ってくれると嬉しいんだけど。」
『私の誕生日って来月だよ?』
「分かってるさ、クリスマスだろ?ここからが今日話したかったことなんだ。」
バッシュを床に置くと、花子は真剣な眼差しでオレを捉える。
「今年の誕生日は一緒には祝えない。」
花子の誕生日は小さいころから3人で一緒に祝うのが通例。クリスマスということもあり、オレの家で毎年小さなパーティーを開いていたのだ。
しかし今年、そのパーティーは開けない。その理由はオレにある。
「・・・彼女ができたんだ。」
『えっ?』
突然のことでびっくりしたのか拍子抜けたような表情を見せる花子。そのあとすぐ様笑顔でおめでとうなんて言うもんだから、オレの心中は複雑だ。
『クリスマスだもん、仕方ないよ。今年は彼女と過ごして。ちなみに赤司のハートを射抜いた彼女って誰だか聞いてもいいの?』
「おい、その顔はやめてくれ。」
だらしなくニヤけるオマエに随分前からオレのハートは射抜かれているなんて口が裂けても言えず、彼女の名を告げる。
「同じクラスの宮古だ。」
『あー、宮古さんね。知ってるよ。マネージャーやってる子ね。うんうん、いいじゃん。お似合いだよ。』
何も知らない花子は能天気もいいところでどちらが告白したのか、キスはしたかと、どうでもいい質問を繰り返す。
・・・人の気も知らないで。
松野先輩に黄瀬を紹介した日だった。松野先輩がこんなことを言った。
「誰がバッシュをプールに捨てようって提案したか赤司は知ってる?」
「は?全部オマエが指示を出していたんじゃないのか?」
「違うよ。宮古さん。クラスにいるでしょ?彼女が提案したのよ。」
あの宮古が、と初めは半信半疑だったが部活が終わったあとに直接彼女に聞けば松野先輩が言っていた通りそれは事実だった。
嫌がらせを辞めてくれるんだったら何でもすると伝えれば彼女はオレと付き合いたいと懇願し、それをオレは受け入れたのだ。