第35章 幼なじみをやめたいんだ
『あれ?真ちゃんは?』
「オレだけだが・・・、緑間も連れてきた方が良かったか?」
『まさか、真ちゃんすぐ怒るし口煩いから。いなくてせいせいするよ。ほら、上がって、上がって。』
赤司から話があるから部活が終わったら家に行くとメールが送られてきたのはお昼のことだった。あの日から1週間が過ぎた。
私はというと3日前に退院して、明日からようやく学校に通えることになったのだ。
「元気そうで安心したよ。」
『もう熱もないし、ピンピンしてるよ。』
「そうじゃなくて、」
言いにくそうに濁した赤司は、部屋に入ると勉強机に置いてあった月バスをパラパラとめくる。赤司が言いたいことが分かった私は冗談めかして笑う。
『嫌なことって寝たら忘れるタイプなのかも、私。』
「それは便利だな。」
『そんなことより、話って?』
明日になれば学校で会えるのにわざわざ家までくるあたり、話にくいことなのだろう。それを踏まえた上で色々考えてみたが赤司が何の話がしたくてここへ来たのかいまいち理解できていなかった。
ベットに腰掛け赤司を見つめるとカバンからゴソゴソと何やら大きな袋を取り出した。
「これ、緑間と2人で買ったんだ。」
『え?なに?』
「開けてみろよ。」
赤司からホイっとスポーツショップの袋を投げ渡される。
『まさかっ、』
「そのまさかだ。」
予想通り開けてみるとその中には、前と同じ型の色違いのバッシュが入っていた。
『どうして、』
「同じ色を探し回ったんだがどこも無くてな。黄色になってしまったんだが、嫌だったか?」
『そんなわけないっ、すごい嬉しいよ。』
「なら良かった。」
前までのバッシュは例の件でボロボロに傷つけられとても使えるような状況ではなかった。また近いうちに買いに行かないとと思っていた矢先のプレゼントに私はとても喜んだ。
しかし、なかなか黄色のバッシュもいいなと思ったのもつかの間、だんだんに申し訳ない気持ちが出てくる。