第32章 知らないフリをしよう
夏休みまであと1週間になった昼休み、花子のTシャツを部室棟の裏にある焼却炉で見つけた。
「・・・やっぱりな。」
間一髪といったところだろか、燃えずに済んだTシャツを回収する。これで花子がウソをついていた理由がなんとなく分かった。
オレは足早に緑間の待つ部室へと向かった。
「赤司、遅かったな。」
「すまない。今日の将棋はなしだ。話がある。」
駒の入ったケースを取り出した緑間が不思議そうにこちらを見る。基盤を片し、パイプ椅子に座ったのを合図に、焼却炉で見つけたバスケ部のTシャツを緑間に見せた。
「それは・・・花子のTシャツか?」
「そうだと思う。タグに山田って書いてあるし、バスケ部に山田はオレが知る限り花子しかいない。」
「・・・どういうことなのだよ?」
状況を飲み込めていない緑間に、予想ではあるが説明をする。
「嫌がらせされているってことか?」
「あぁ、多分な。」
「誰がそんな幼稚な真似をしてるんだ?」
「・・・分からない。ただ、花子をよく思わない誰かとなると・・・・・、バスケ部の誰かか。」
「オマエのことを好いてる女も可能性としては考えられるな。」
「・・・そうだな。」
気に食わん、と腹を立てた緑間は立ち上がり部室を出ようとする。
正義感からか、はたまた好きな女が傷ついているからなのか、きっと後者だからだろう。緑間は今にも犯人探しを始めそうだった。