第30章 私、シューターになりたいです
1軍か2軍、はたまた3軍か。
振り分けテストのある日まで私は真ちゃんと赤司と夜遅くまで公園で練習をしていた。
運動神経は昔から人より秀でていて困ったことはなかったし、バスケも習ってはいなかったが、小学生の頃から3人でよく遊んでいた為、私はこのテストに多少の自信があった。
3軍行きの生徒の発表が終わり、私はまだ残っていた。
・・・1軍に入れますように。
祈るような思いで目を瞑った。
「山田。」
『はいっ。』
監督から名前を呼ばれ、返事をする。
ここで呼ばれるということは2軍なのか?そんな不安を抱えながら監督を見つめる。
「誰にバスケを教わった?」
『誰にも教わってません。幼なじみと遊んでいただけです。』
「そいつは誰だ?」
なんでそんなことを聞くのだろうか、と思ったが、この監督。人相がとても怖い。とてもじゃないが聞かれたこと以外話せる隙もなく正直に答える。
『緑間くんと赤司くんです。』
すると周りがザワザワと何か話し出したのが分かった。監督は考えるように腕を組み、私を上から下まで品定めするようにジロジロと見る。
あまりいい気はしない。
少しすると重たそうに監督が口を開いた。
「山田、オマエはどんなプレイヤーになりたい?」
『私、シューターになりたいです。』
「ほう、悪くない。」
一瞬監督の三白眼が光り、眼の色が変わったのが分かった。
「オマエは1軍だ。ただし、使えないと分かればすぐに2軍に落とす。分かったな?」
『はい、ありがとうございます。』
「残りは全員2軍だ。常に入れ替わりは行っていく。下のものは必死に上を目指せ。そして上のものは下から抜かれぬよう死にものぐるいで練習しろ。学年も関係ない。上手いヤツが試合に出れる、それだけだ。以上。」
強豪校なら至極当たり前のこのシステムで、私は女子ならではの妬み嫉みの狭間で煩悩されるのだった。