第27章 オマエのが綺麗だよ
『花火すっごいキレイだったね、真ちゃん。』
「あぁ、そうだな。」
花火が終わり高尾とも別れ帰路につき、今は花子の家の前。それなのにオレはまだ花火よりオマエのが綺麗だよ、の一言が言えないでいた。
『明日午後からだから、少しゆっくりだね。』
「あぁ。」
『じゃ、また明日。』
オレに手を振り、花子が家の玄関に鍵を差し込む。
・・・良いのか、オレ!
褒めるならもう今しかないぞ!言うんだ、オレ。
「花子っ、」
『ん?なに?』
何も知らない花子は振り返ってニコニコと笑顔をみせる。
「そのさ・・・浴衣、」
『浴衣?』
「おう。・・・なかなか似合っているのだよ。」
ちょっと照れくさそうに下を向く花子が可愛くて、ちょっと触れたい。そんな不純な気持ちで花子に近づく。
・・・玄関だけど、キスくらい良いだろう、したって。
右手は白い首筋に添え、左手で腰を引き寄せれば、次に何をされるのか理解した花子はトロンとした目でオレを捉えると瞼を閉じた。
しかし、この時オレは気付いてしまったのだ。
「花子、オマエ・・・」
『ん?』
「熱、あるだろう?」