第27章 オマエのが綺麗だよ
『いや、えっと、うん、ちょっとね。』
・・・しまった、油断した。
実を言うと、朝からなんだか気怠い感じがして熱を測ると7度8分だが熱があった。
原因はきっとあの雨に濡れたから。
あたりまえだが、秀徳のバスケ部は毎日のように部活があり、付き合ってからデートというデートを私たちはしていなかった。
それが嫌だという訳ではない。
真ちゃんがバスケしている所を近くで見れているし、部活の行き帰りだっていつも一緒。不満なんてなかった。
ただ、今日の花火大会。
おまけ(高尾)もいるが、これは歴とした初デートだ。(ちなみに合宿中の自販機までの散歩は流石にデートとはカウントしたくない。)
そう思ったら、この花火大会行かないという選択肢、私にはなかったのだ。そして朝からの練習もいつも通りみんなにバレないようにやり過ごした。
それなのに、私としたことが。
キスしたいな、なんて下心にうつつを抜かしたばっかりにいとも簡単に熱があることを真ちゃんに気付かれてしまったのだ。
「何度ある?」
私の部屋に入り部屋着に着替えると早速真ちゃんから熱を測るように催促され、しぶしぶ体温を測った。
『・・・怒らない?』
「怒らないから、ちゃんと言え。」
『8度6分。』
「上がってるじゃないかっ、バカめ。」
怒らないって言ったくせに、と思ったが部屋に入って安心したのか、気が緩みどっと身体が怠くなり言い返す元気は既になかった。
「早く、横になれ。」
真ちゃんに言われ、ベットへ行こうと一歩踏み出したとき、頭がグワンと揺れるような感覚に陥った。
・・・まずい、転ぶ。
痛みを受け入れるように目を強く瞑ってみたが、いくら待ってもその痛みはやってこなく、気付いたときには真ちゃんの胸に身体を預けていた。
「オイ花子、大丈夫か?」
『・・・クラクラするかな。』
「全く、バカめ。しっかりつかまれよ。」
『へ?ちょ、ちょっと!』
真ちゃんは私をひょいとお姫様抱っこすると、ふわっと優しくベットにおろした。