第9章 番外編 誕生日のプレゼント
この子に害はない、本当に。うん、きっと善意100%なんだ……!
と自分に言い聞かせ、とてつもなく小さな声で黄色と答えた。
1分もしないうちに一着の下着を選んだ薫は、それをノエルに見せた。
それはノエルが一目惚れしてしまうほど好みの下着ではあった。
そして可愛い下着を着た自分をプレゼントするのが、ローにとって一番いいプレゼントになるのではないか、と納得している自分がいた。
さらに言ってしまえば、ローが好きそうなデザインではある。
リボンもついてるしちょうどええわ! と会計に持っていく薫。
その姿に慌ててノエルがお金を払った。
「何や、お近付きの印にウチ買ったろ思うてたのに」
「気持ちは嬉しいけど、これは私が買わなきゃ意味ないもん」
店員の優しい視線が逆に痛い。そう感じながらも、商品を受け取り店を出た。
「やっぱウチノエルはんの事気に入ったわァ」
「そういえば、どうして初対面の私に声をかけてくれたの?」
そう聞くと、薫は立ち止まってしまった。
さあ、と二人の間を風が吹き抜ける。
「んーとな? ウチの知り合いに、似てる気がしたんよ。なァあんた……兄弟とかおらへん?」
「いないよ、私はずっと一人っ子だったもの。兄弟がいるならよかった、と何回思った事か…………」
目を伏せてしまったノエルに、薫は慌てて謝罪をした。
誰にだって踏み込まれたくない部分がある。自分はそこに踏み込んでしまったらしい。それも、土足で。
「薫のせいじゃないよ。今日はありがとう、恥ずかしいけど…………頑張ってみる」
「せやね! ちゃんと誘うんやで?」
ボンッ! とノエルの顔が真っ赤になった。この女は本当に、何という時間にこんな話をするのか。
「これ、ウチの電伝虫の番号や。なんかあったら教えてな! また、いつか会おうや!」
「今日は本当にありがと、薫」
「ええんよ! 彼氏と仲良くな!!」
ほなまたなー、と言い薫は何処かに走っていった。
その背中を見送ったあと、ノエルもポーラータング号に帰る事にした。
船では船員達が明日のローの誕生会の計画を立てている。ペンギンがいないのは、恐らく部屋でローの足止めだろう。
自分の部屋に下着をしまい(隠し)に行ってから、ノエルも話し合いに参加した。