第12章 ただいま
何事かと後ろを振り返ると、海王類がこちらを見下ろしていた。
「⁉」
ライオン型の比較的大きめな海王類。このポーラータング号ならやられたりしないだろうが、傷がつけば厄介だ。
みんなに会う前の準備運動のつもりで、とノエルは構えた。
「薔薇の女王!」
ノエルの十八番で海王類は一撃でやられた。
気絶したのかぷかーっと海に浮いている。
さて、とノエルが中に入ろうときた時、バタバタと船内からたくさんの足音が聞こえてきた。
やがて足音は大きくなっていき、バン!! と勢いよくドアが開けられた。
海王類の接近を感知した船員達が倒そうと慌ててやってきたのだ。
甲板に人がいた事に一瞬警戒するが、そこにいた人物に目を見張った。
「え、ちょっ、ノエルちゃん……⁉︎」
槍を構えたペンギンが驚いたように声を出す。
「うん、ただいまっ!」
海王類などもうどうでもよかった。船員達はノエルが帰ってきたと知ると、一斉に抱きついた。
「ノエルちゃん本当に良かったァァァァァ」
「わっ、ペンギン! 泣かないでよ!」
そう言うノエルの瞳も涙で潤んでいる。
「ノエルちゃんんんンンンン!!!」
「イッカクちゃん〜!!」
「ノエル〜!!!!」
「しゃちぃ……!!」
「ノエル!!」
「ベポもただいま!!」
ひとしきりハグが終わった頃、甲板の異変に気付いたローがやってきた。
「…………ノエル!!」
「ロー!!」
ノエルの存在に気付いたローが駆け寄ってきた。強い、けれど痛くない力加減でノエルを抱きしめる。
「ただいま、心配かけてごめんなさい」
「本当だ……お前は本当に…………無事でよかった…………」
消え入りそうなローの声に、ノエルは泣いてしまった。
「ロー…………! ロー……!!」
「ノエル! ノエル…………」
二人は船員達に見守られながら、空が群青色に変わるまで抱きしめ合っていた。