第9章 番外編 誕生日のプレゼント
(うーん…………。どうしたらいいんだろう)
偉大なる航路(グランドライン)とある春島。
そこにあるアクセサリーショップの前で、ノエルは頭を抱えていた。
(どれもこれも何かしっくりこないんだよねェ。ローの雰囲気に合うのは、どんなものなんだろう……)
理由は簡単。ローの誕生日が近いのだ。普段たくさんのモノをもらっているノエルは、彼に何か贈り物がしたいと悩んでいた。
しかし、中々贈り物が決まらない日々。誕生日は既に明日に迫っていた。
「うあーん!! 何あげたらいいの⁉︎ 誰か教えて〜!!」
道の真ん中で叫んでいる女性は、何とも言えない不審人物だ。
「誰に何をあげるんか教えてもろてもええ?」
「ふえ……?」
半泣きのノエルが顔をあげた先には、綺麗な服を着た女の人が立っていた。
着物を洋風に改造した服に、キャスケット帽を被っている。そして、ゴーグル。
艶やかな黒髪は肩につかない程の長さで切り揃えられており、黒曜石のような美しい瞳を持った女性だ。
「あ、堪忍な。先ずは名乗らなあかんね。ウチ薫(かおる)言います、お姉さんの名前は?」
薫、と名乗った女の独特の言葉遣いに戸惑いながらも、しっかりと返事をするノエル。
「えっと、ノエルって言います!」
「ノエルはん、ね。よろしゅうな! ほんで、何に悩んでるん?」
「えっと…………恋人に、誕生日の贈り物をしたいんですけど、何を送ったらいいかわからなくて……」
「自分あげたらええやんか」
「⁉︎」
さらりと言ってのけた薫に、ノエルは驚いた。真っ昼間からこの人は何を言ってるのだろうか。
「ウチも、恋人の誕生日はリボンつけたウチをあげたわァ」
懐かしそうにうっとりと頬を染める薫。
やばい人に絡まれたのでは、と警戒態勢をとるが
「ほな! 今から下着見に行こか!」
「ふえ⁉︎」
手を取られ、引き摺られるような形で歩き出すノエル。
いざとなったら攻撃してでも逃げよう。そう心に決めついていった。
が、辿り着いたのは本当に普通のランジェリーショップ。
「何色がええねんやろなァ!」
薫はワクワクしながら中に入って下着を物色している。時々ノエルに下着を充てて、これはちゃうね、などと呟いている。
「何色がええ?」