第8章 溢れる幸せと自分の役割
ここ数日ずっと不安という感情に陥っていて、やっと安心する事が出来たのだ。
少しオドが狂っても何ら不思議ではない。
「さて……どーしますかね」
海軍から逃げる時に使った量とは、比にならない程のオドを昨日使ったのだ。
それらが重なりに重なって、今回のような事が起こったのだろう。
「適当に海を凍らせてみても…………駄目か」
海を凍らせてしまっては、ポーラータング号が進めなくなってしまう。
「どうしようね〜」
「おれらが聞きたいよッ!!」
見事なツッコミである。ケラケラと笑っていると、イッカクがノエルの手をぎゅっと握った。
「ノエルちゃん…………」
「イッカクちゃん、ありがとう。安心す…………誰⁉︎」
バッとノエルが振り返った先は海…………誰もいるはずがない。
「ッ、薔薇の女王!」
何もない場所に攻撃してみると、ぐにゃりと空気が歪んだ。
「よく気が付いたものだ! 流石四季姫!」
やがて現れたのは、海軍の軍艦一隻。
以前ノエルを捕まえに四季島までやってきた、少佐(仮定)である。
「懲りずにまた…………」
全員が戦闘態勢を取った瞬間。視界から少佐(仮定)の姿が消えた。
─────ノエルと共に。その場には、彼女が持っていた本が落ちた。
「なっ、離せ……!!!」
「⁉︎」
ようやく姿が見えたと思ったら、ノエルは少佐(仮定)に捕らえられていた。ご丁寧に、海楼石の手錠を付けられている。
「ノエル!!」
「ロー……!」
何とか逃げようと試みるが、能力は使えない。
どうにかならないのか、そう考えていた時、ふとある考えが思い浮かんだ。
「フハハハハハ! お前達感謝するぞ、ここまで四季姫を送り届けてくれてな! これでようやくおれは海軍本部大将になれる……!!
キリキリの実を食べた甲斐があったもんだ!」
(なるほど、自然系の能力者になったのね)
キッと決意の表情でロー達を見つめるノエル。
「ロー! 私は、ハートの海賊団の一員だから!! 絶対、何があっても戻るから!! だから、信じて待ってて!!」
海楼石を付けられていようが、オドには影響されない。そして今は多大なるオドが暴走中だ。
今なら、いけるだろう。
ノエルは後ろ手に拘束されながら、手を動かした。