第8章 溢れる幸せと自分の役割
早朝…………と言っても船員達は皆起きている時間。
ローとノエルはまだ眠っていた。が、ローは何故か寒さを感じて目が覚めた。
ノエルを抱きしめれば暖かくなるだろう、と腕の中の彼女を抱きしめるが、いかんせん冷える。
(………………冷える?)
ガバッと勢いよく飛び起きたローは、ベッドの惨状に目を剥いた。
いや、ベッドだけではない。部屋のあちこちに冷気が漂い、所々霜が降りているのだ。
原因は、どう考えても眠っているノエルなのだが……。彼女は寒くないのだろうか。
起こして寝ぼけ眼の彼女に説明すると、ギョッとしたように部屋を見渡した。
「なっ、なっ、何で…………!!」
困惑しながらも、テーブルから昨日の本を取り、パラパラとページをめくっていく。
「ッ、原因はこれ…………⁉︎」
覗き込んだ見ても、何が書いてあるかはわからないが、ノエルの焦り具合からして相当まずいのだろう。
「【オドの暴走】だ…………!!」
「暴走……?」
穏やかではないその言葉に、ローは眉を寄せた。
「ッ、それはあとで話す……! 今は部屋をこれ以上凍らせないために、外に出る…………!!」
たまたまポーラータング号が海面に浮上していたのが幸いだ。
勢いよく甲板へ続く扉を開けると、そこには大勢の船員達がいた。
ローとノエルがこんな時間に起きている事にも驚きだが、二人の尋常ではない表情に、何事かと身構える。
事の発端やら何やら説明していると、大慌てになる船員達。
「どーすんだ⁉︎ 空に適当な技出すとかは⁉︎」
「空に出すより隕石落とした方がまだ早いと思うんだけど……」
「おれらが死ぬよ!!!」
「つか何でそんな冷静なんだよ⁉︎」
「いや、慌ててるみんな見てたら冷静になったというか…………」
(ていうかさっきからオドを溜めてる器を大きくしてるはずなのに、まったく落ち着いてくれない!)
目を閉じて精神世界に同調してみるが、あまり効果は得られない。
普段オドは小さな滝のように流れている。それを小さな湖に溜め、必要な時の使用し、減った分は時間と共に回復していく。
ノエルのイメージはそのようなものだ。
シキシキの実を食べてから、オドを使う機会があまりなかったため、今回暴走を起こしたのだろうか。
もう一つ、理由はあった。