第8章 溢れる幸せと自分の役割
それを隠すように夕飯を食べるか否か尋ねると、お腹空いたから食べる! と返された。
「行こ、ロー!」
ぎゅっと手を握り、ローを立ち上がらせる。その笑顔につられ、彼もまた微笑んだ。
「夕飯何だろうね〜」
「シャチが確かカレーだって騒いでたぞさっき」
「そうなの⁉︎」
やったァ、と喜びつつも、ノエルは自身の身体に違和を感じていた。
(頭はもう痛くないのに…………何だろこの、言い難い違和感は)
何処が不調かと問われても、具体的な場所は言えないが、やはり体が不調なのは間違いない。
気にしていても仕方ないと思い、ノエルは身体のことを考えないようにした。
食堂に着くと、いい匂いが漂っていた。カレー特有のスパイスの香りが食欲を刺激する。
「あっ、ノエルちゃーん! こっちこっち!」
「イッカクちゃーん!」
笑顔でイッカクの元へと向かうノエル。ローもその隣に座り、シャチとペンギンとベポがその向かいに座る。
いつもの光景だ。
「お腹空いたね〜!」
「ノエルちゃんもう体調ヘーキ? 無理してなーい?」
「うん、平気〜! ありがと、イッカクちゃん!」
コックの自信作のカレー。全員に渡り終えると、皆一斉に食べ始める。
「うっ、辛ッ…………」
「ノエルちゃん辛いの苦手だっけ?」
「んー、舌がピリピリするからあんまり好きではないかなァ……」
残したりはしないけど、とフーフーしながら少しずつ食べる。
するとイッカクが思い出したように
「じゃがいも潰してルーと混ぜると甘くなるんだよ!」
「そうなの⁉︎」
グイ、とスプーンの裏で言われた通りにしてみる。口に入れると
「わ、ほんとだ! 美味しい!」
「でしょでしょ!」
きゃっきゃとはしゃぐ二人を見ながら食事をする。そして和む。それがこのハートの海賊団の日常だ。
カレーも食べ終わり、それぞれがお茶を飲んだり酒を飲んだりと自由に過ごす中、イッカクとノエルは二人で話していた。
「へー、じゃあ薬室はノエルちゃんの管轄になるんだ!」
「うんっ、任せてもらったの!」
私も薬学学ぼうかなー、とイッカクが考えていると、ペンギンがふと
「そういえばノエルちゃん。さっき言ってた、四季姫の力ってどんなものなんだ?」
と尋ねた。