第8章 溢れる幸せと自分の役割
(見つけた、この船で私が出来る事!!)
嬉しそうに顔を綻ばせながら、ノエルはローの部屋まで走っていった。
バターン! と勢いよくローの部屋のドアを開けた。
ものすごい不機嫌そうな顔で振り返ったローだったが、ノエルの姿を見るやとても優しい顔をした。
「ロー! あのねあのね!!」
「どうした、ノエル」
勢いよく飛びつくも、難無く受け止めるロー。そのままノエルは彼の膝に座らされた。
恥ずかしがるノエルだったが、嬉しさが勝ち、先に報告した。
「私ッ、この船の薬剤師になる!!」
「…………いきなりどうした?」
ローの柔らかな表情も一転。心底わからない、といった顔をしている。
「そこはおれから説明を」
「ペンギン」
ペンギンと、彼の肩に乗ったヴィルセンが入ってきた。
「おれさっきまで薬室で薬作ってたんですけど、そこにまよ…………やってきたノエルちゃんが薬草の事詳しかったんです」
「オイ今迷ったって言いかけたよな?」
またか、とローは本気で道しるべ作るか、と思った。
ローとペンギンの意見が一致した瞬間であった。
「薬草から薬作れますし、薬室はノエルちゃんの管轄下にあった方がいいと、おれは思います」
「そうか、ペンギンがそう言うんだ。ノエル、頼めるか?」
ローからその言葉が聞けるのがとても嬉しかった。
「うん!! 任せて!! あ、薬草育ててもいい?」
「あァ、好きにしたらいい」
ぎゅっとローに抱きつくノエル。空気を読んだペンギンは、ヴィルセンを連れて部屋を出て行った。
「ロー、私頑張るからね」
「無茶と無理だけはするなよ、絶対」
「うん…………え」
少し冷静さを取り戻したノエルは、今更ローの膝の上にいると気付いたようだ。
みるみる顔が真っ赤になっていく。
「ククッ……今更か?」
「え、あの……重くない?」
「阿保か、鍛えてんだ。大丈夫に決まってんだろ」
そのままローの顔がノエルに近付く。反射的に目を閉じるが、突然の頭痛に見舞われ顔を背けてしまった。
「ッ……」
「どうした⁉︎」
「ん、あたま…………いたい」
不規則な頭の痛みに軽い目眩すら覚える。そんなノエルをローは優しく抱き上げ、ベッドに寝かせた。