第8章 溢れる幸せと自分の役割
「これは私の四季姫としての能力なんだよね〜。流石にシキシキの実じゃ植物は出せないよ」
またもや勝手に棚を物色し、足りなさそうな薬を見つけると、薬草を選び、薬研で作り出す始末。
「これは鎮痛剤になるし、こっちは解熱剤に。あとは鎮咳剤にも…………」
と、棚の中の整理までし始めた。
「おれ、ここノエルちゃんの管轄にした方がいい気がしてきた」
「いやいや、私じゃなくてもみんな薬くらい作れるでしょ?」
「育ちの違いを感じた……」
あのさノエルちゃん、と言いながらペンギンはノエルを顔を覗き見る。
ノエルは、普段見えないペンギンの瞳を一瞬だけ見た気がして、少し驚いた。
「この船に乗ってる奴らは全員、ある程度の医療知識は持ってる。けど、薬を作れる奴なんて、誰一人いないんだ。
それこそ、船長でもね。ノエルちゃんにしか出来ない仕事なんだ。
頼んでもいいか?」
「うんっ!!!」
ぱあっと明るく笑ったノエルは、たたたーっと部屋を出て行ってしまった。
ローに報告しに行くのだろう、と簡単に予測出来たため、ペンギンも部屋を後にしノエルを追いかけた。
「にゃう」
「おっ、ヴィルセン。ははは、部屋の匂いはキツかったか?」
「にゃん」
ヒョイっとヴィルセンを抱き上げるが、するりと逃げられた。
逃げられると言っても、肩の上に乗られるのだが。
「抱っこはノエルちゃんの特権か?」
「にゃーにゃにゃー」
器用にバランスを取るものだ。ヴィルセンは人見知りこそしないものの、船員の誰にも抱っこをさせない。
イッカクは気分次第で一割抱っこ、残り九割肩である。
シャチは時々頭に乗られている。
「さて、ノエルちゃんと船長のところ行くか」
「にゃにゃー!」
肩の上にいるヴィルセンの喉を撫でる。返事と共にゴロゴロと、喉を鳴らす音が聞こえた。
抱っこは嫌がるくせに、撫でるのはアリなのか。と、ペンギンは思ったらしい。
「ロー! あのねあのね!!」
ローの部屋からとても嬉しそうで元気な声が聞こえてくる。
「どうした、ノエル」
普段なら適当にあしらうローの声も、いつもよりとても優しい。
補足説明をするため、ペンギンも部屋に入っていった。