第8章 溢れる幸せと自分の役割
「何でこう、思った通りに作れないんだろうなァ……」
声がはっきりと聞こえたのだが、その声の主に唖然とした。
「ペン…………ギン?」
怖がっていたのが阿呆らしく思えてくる。
ノエルはドアノブに手をかけ、室内に入った。
ヴィルセンは室内の匂いがキツかったのか、何処かに行ってしまった。
「うおっ、ノエルちゃんか。どうかしたか?」
「うん、船内まよっ…………うろついてたら、ペンギンの声が聞こえてきたから。ここはペンギンの部屋じゃないのに、何かなーって思って」
「今完全に迷ったって言おうとしてたよな?」
そろそろ船内に道しるべでも付けるか、なんて言うペンギンに、若干拗ねながらも室内を見渡す。
そこは、薬草やら薬やら色々なものが置いてあった。
「ごめんって、拗ねないで。ここは薬室だよ、おれは今手術用の麻酔作ってたんだけど…………薬は専門じゃないから中々お手上げでな」
「そっか、次の島まで時間かかるんだもんね?」
「あァ、その間に誰かが大怪我しても困るだろ? この間の島、薬は全然置いてなかったんだ」
「大変だね…………あれ?」
机の上の薬研の中や、その周りの薬草を見たノエルは、違和を感じた。
「ね、ペンギン。今麻酔作ってるって言ってたよね?」
「うん、そうだよ」
「だったら、今使おうとしてたオニユリよりも、ミツノハソウの方がいいよ。オニユリだと効果少し薄くなっちゃうから」
勝手に棚からミツノハソウを取り出し、ペンギンに渡すノエル。
流石のペンギンも驚きだ。呆然としているペンギンを見て、ノエルはハッと気が付いた。
「ごめん! 余計なお世話だった⁉︎」
「いや、そんな事ないよ! ただ、ノエルちゃんがこんな事知ってるのは意外だったと言うか……」
「私、一応四季姫だからさ。植物扱うのは得意なんだよね。ただ、虫とかは嫌いだけど」
そう言いながら、掌から何かの植物を出した。
それは先程のミツノハソウだった。
「勝手に使っちゃったから補充しておくね」
「悪魔の実って本当に驚きだよな……」
ノエルからミツノハソウを受け取ったペンギンはしみじみと呟く。
それを聞いたノエルは、違うよ、と否定した。