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死の外科医と四季姫

第8章 溢れる幸せと自分の役割


「濡れちゃったね、ヴィル平気?」

「にゃーにゃあにゃ」

「ありゃ、タオルもらってこようか?」

「にゃうにゃあにゃにゃーにゃ」

「そ? ならいいか」

その後も会話をしながら船内をうろついていたのだが

────ローは部屋にこもったまま出てこないため、ノエルは暇なのだ────

偶然その場面を見たシャチは

(あれ…………何で会話できてんの?)

と、思っていたそう。

「ねェヴィル〜? ここ何処かなァ」

「にゃーにゃい」

ここに来て一ヶ月は経過しているというのに、ノエルは迷子になったらしい。

「あれれ、本当にここ何処なんだろう。やばい、迷子だ」

見たところ人もおらず、ヴィルセンとの会話に夢中になっていたため、何処から来たのか覚えていない。

「ヴィル〜。何処から来たのか覚えたりしない?」

「いにゃーい」

「そっかァ……」

いい加減地図を持って歩いた方がいいのかもしれない。

そう思いながらも、うろうろ歩く。そしてさらに迷う。

その悪循環に気付いていない。
少し周りを見渡してみる。腕の中のヴィルセンは眠ってしまっている。

(見た事あるようなないような…………?)

勘で歩いてみると、自分の部屋の前だった。
よく見渡せば、先程までノエルがいた場所は、自分の部屋の奥の方だったのだ。

(……道わかったし、ちょっと探検しちゃお)

ヴィルセンを抱え直し、来た道を戻るノエル。

ふと、何か聞こえたような気がして立ち止まった。

「………………ら………………」

(やっぱり何か聞こえてくるーッ! 気のせいじゃなかった!!)

この船に不審者がいるわけがない。だとしたら、幽霊なのでは……そう考え、頭をブンブンと横に振った。

「いや、そんなのいるわけないって……。空想上の生き物なんでしょ? だったら…………怖くはな」

「………………だァ!」

「ヒェッ…………怖いですってほんとやめてくださいお願いだから」

怒鳴り声のようなものが聞こえ、ノエルは咄嗟に、ぎゅうっとヴィルセンを抱く腕に力を込める。

驚いたヴィルセンが責めるように鳴くも、主人の涙目に狼狽え始めた。

「ヴィルセン〜…………」

ブワッと全身の毛を逆立てて、声が聞こえた扉を警戒する。

覚悟を決め、ゆっくりと扉に近付く。
すると

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