第2章 ハートの海賊団との出会い
気休め程度にしかならないが、周りに霧を出して姿を隠す。
途中通り過ぎた酒屋に海兵を見つけ、慌てて路地裏に向かう。
民家の角を曲がった瞬間……
「きゃっ⁉︎」
誰かにぶつかってしまった。途端に霧が解除された。転びそうになったところを、相手が助けてくれた。
「す、すみません!!」
慌てて顔を上げると、男と目があった。
隈があり、もみあげと顎髭が特徴的で、白い帽子を被っている。身長はとても高く、見上げるほどだ。そして、とても長い刀を持っている。
「いや、いい」
踵を返し行ってしまいそうな男の腕を、ノエルは反射的に掴み
「助けて!!!」
そう言った。何故言ったのか自分でもわからない。初対面の、しかも男に助けを求めた。
しかし、彼女は直感していた。この人なら助けてくれる、と。
男はノエルを見つめ、その手や首に鎖が付けられている事、傷がたくさんあるのを見つけた。
ハァ、と一つため息を吐き、彼女の身体を軽々と担ぎ上げた。
「ちょっ、ええ⁉︎」
「静かにしていろ、落とされたいのか」
そう言われ、流石のノエルも黙り込む。
男は元来た方向へ進んでいく。路地裏を進むあたり、彼女が誰かに追われていると理解してくれたのだろう。
「お前、誰に追われてる」
「……海軍」
そう言うと、男はピクリと反応した。舌打ちをすると、歩くスピードを上げた。
その影響で落ちそうになった彼女は、男の首に手を回そうとして、躊躇った。
「落ちるなよ。捕まってろ」
その言葉に甘え、おずおずと首に手を回した。
彼女の身体が安定したのを確認すると、男は先程よりも早く歩いた。
やがて見えてきたのは彼が乗る船、ポーラータング号。黄色い潜水艦だ。
中に入り、診療台にノエルを座らせる。
彼女は物珍しそうに辺りをキョロキョロと見渡していた。
「海楼石…………能力者か」
こくりと頷き返事をすると、目を閉じていろと言われた。言われるまま目を閉じた。そのうち、ガシャリという音とともに、首と両手首にあった質感がなくなった。
「いいぞ」
目を開け、両手首を見ると、鎖が外れていた。慌てて首に触ると、海楼石の首輪すら外れている。驚きすぎて、声も出なかった。
「ありがとう……ございます」
「礼を言うのはまだ早い。その傷も手当てしてやる」