第6章 気持ちの整理
「お前ら、コイツに何しようとしてた?」
「こっ、コイツ、北の海のトラファルガー・ローだ!!」
「あの【死の外科医】のか⁉︎ ヤベェ、ずらかるぞ!!」
ローの登場により、男達は情けない声を上げながら何処かへ逃げていった。
いつの間にか右手首の不快感は消えていた。
どうしてここにいるの? その白衣はどうしたの?
そんな質問をするより先に、ノエルの体は動いていた。
ぎゅうっ、と目の前の背中に抱きつく。
「なっ、オイ……」
「ロー好き…………大好き」
「ッ⁉︎」
ぎゅうっと抱きしめる腕に力を入れた。ろーの背中がピクリと動く。
「お前…………」
パッと振り返ったローは眼鏡をしていた。しかも、トレードマークとも言えるあの帽子も被っていない。何が会ったのだろうか。
「ロー、その格好どうしたの?」
「港の診療所が人手不足だから手伝えって言われたんだ」
へー、かっこいいね! とにこやかに笑うノエルに、それより、とローは彼女の右手首に目を向ける。
先程まで抑え付けられていたため、少し赤くなっている。チッ、と舌打ちし、ノエルの右手首を掴み、唇の高さまで持ってくると、ベロリと舐め上げた。
「んっ、ロー……」
「勝手に飛び出してったと思ったら、危ねェ目に遭いやがって」
ごめんなさい、と謝り再びローに抱きつくノエル。
「でも、ローが助けに来てくれたよ。助けに来てくれてありがとう、ロー」
仮にも好きな女だと自覚した相手に、好きだと言われ抱きつかれている。この状況で我慢できるほど、ローの理性は強くなかった。
「惚れた女守る事ぐれェ大した事じゃねェだろ」
「え、ロー……? 今なん……ひゃあっ!」
ローは優しくノエルの手を外し、ヒョイっと抱き上げた。
初めて会った時とは違って、今度はお姫様抱っこで。
「ちょっ、ロー! 何処行くの⁉︎ ってか、今何て言ったの⁉︎」
動揺してわあわあ騒ぐノエルだが、ローは何も反応しない。何を言っても無駄だと判断したのか、それ以上何も言わなくなったノエル。
大人しく、ローの胸にぽすりと頭を預けた。
(そういえば、あのネコちゃん何処行っちゃったんだろう。お別れできなかったなぁ)
なんて、呑気な事を考えながら。