第6章 気持ちの整理
そして
「───も、ノエルの特別な人だから、愛してる!」
「! おれも愛してる!!」
「へへ、愛してるって、嬉しいね!」
「だろ⁉︎」
青年は嬉しそうにノエルを抱きしめた。
二人は、日が暮れるまでそこで遊んでいた。
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(そうだ、愛してる、は特別で、大切な人に伝える魔法の言葉。あの人は今何処で何をしてるんだろう。ねェ───、私は今でも愛してるよ)
ふと我に返ったノエルは、ベンチに横になろうとした。が、背中に当たるのは硬いベンチの感触ではなく、何やらふわっとしていて、むにっとしていて……暖かい何か。
「何ッ⁉︎」
驚いて起き上がり、振り返って見たのは、驚きで目をまん丸にしている黒猫だった。
黒猫はノエルと目が合うと、睨みつけるように目を細めた。
「ご、ごめんねネコちゃん!」
許して、と撫でようとすると威嚇してきたが、気にせず撫でる。ノエルに害がないとわかったのだろうか、黒猫はゴロゴロと喉を鳴らしながら擦り寄ってきた。
「おいで」
両手を広げてやると、ぴょいと膝の上に飛び乗ってきた。背中を撫でてやると、気持ちよさそうにウトウトし始める。
眠ってしまった黒猫を胸に抱え、自身もベンチに横になる。
睡魔に負け、ノエルはいつの間にか眠ってしまっていた。
それを見たシャチ達は、微笑みを浮かべながら船に戻っていった。
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「…………て、起きて、お姉ちゃん」
子供特有の少し高めの声でノエルの目が覚めた。体を起こそうとし、先程の黒猫がまだ乗っている事に気が付き、抱えるように支え起き上がった。辺りはもうオレンジ色に染まっている。
だいぶ眠っていたようだ。そして今ノエルを起こした母娘もだいぶ遊んでいたようだ。
「あ、お姉ちゃん起きた! おはよう!」
「おはようございます……?」
まだ少しぼんやりとしている頭ではあったが、少女の母に会釈をした。ふんわりと笑いながら会釈を返してくれた。
「お姉ちゃん、このニャンコの飼い主さんなの?」
「ううん、この子とは今日会ったばっかりよ。起こしてくれてありがとう」
どーいたしまして! とニパッと笑う少女につられ、ノエルも笑顔になった。