第6章 気持ちの整理
ウキウキとしながらノエルが向かった方向に進んでいく。
仕様がない、とペンギン達も後を追う。一度辞めようかと思ったイッカクだが、その顔はどこか楽しそうだった。
「親友の初恋だもの、幸せになって欲しいな」
それを聞いたペンギンは、嬉しそうにイッカクの頭を撫で、二人でシャチを追いかけた。
先程の気配が仲間だとは知らず、ノエルはベンチでのんびりと母娘の会話を聞いていた。
「ねェママ、愛してるってなあに?」
「あらぁ、難しい言葉を知っているのね。いきなりどうしたの?」
「パパがね、さっき言ってたの! アルがパパにだーいすきって言ったら、パパは愛してるぞーって! もちろんママもだけどな! って!!」
あの人ったら……と、少女の母親は嬉しそうにため息を吐いた。そして、少女に向かって嬉しそうに話しだした。
「愛してるって言うのはね……」
母娘の会話を聞きながら、ノエルはとても懐かしい感覚に襲われていた。
(そうだ、私もあの子と同じ事聞いた事ある。あれは確か、私が五歳の頃だった)
ノエルは過去に想いを馳せていた。
────────────────────
年端もいかない少女が、森の中を走っていく。
少女はやがて地面に座っていた青年の背中に飛びついた。
「うおっ⁉︎ ノエルか……驚かすなよ」
悪びれもなくごめん、と言うノエルを青年は膝の上に座らせる。
「ねェ、───。愛してるってなあに?」
「いきなりどうした? 難しい言葉知ってんなァ……」
「ノエルが眠る前にママがいっつも言ってくれるの! でもね、意味がわかんないの。ノエルはママ大好きよ? でも、愛してると大好きの違いってなあに?」
「うーん……」
この幼くも賢い少女にどうやって伝えるか、青年は頬を掻きながら考え込んだ。
「愛してる、は大好きよりも大好きって事だな。特別で大切な人に伝える魔法の言葉さ。ノエルの母さんはノエルが特別で大切なんだよ。ノエルも、いつか大人になって、そんな存在が出来たら言ってみるといい」
「うん! ありがとう! ノエル、ママに愛されてるんだ〜!」
青年の胸にもたれかかり、足をプラプラさせながら嬉しそうに笑う。