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死の外科医と四季姫

第6章 気持ちの整理


下を向きながら知らない街中を走って行くノエル。こんな状態では誰かにぶつかってしまうかもしれないのだが、彼女は器用に人を避けて走る。

ようやく落ち着いた頃には、帰り道などわからなくなっていた。

「ここ…………何処なんだろう?」

周りを見渡してみても、当然知っている景色ではない。真っ赤だった顔は真っ青に変わった。

何処をどう走ってきたのかも、何処から来たのかも覚えていない。と言うか知らない。

適当に歩こうと踵を返した瞬間、右斜め向かいの民家の角を睨みつけた。

(人の気配がする…………誰?)

「薔薇の女王!」

民家の角の地面に、威嚇するように攻撃を放つ。強い者なら出てくるだろうし、弱い者なら逃げていくだろう。

万が一の時を考え、戦闘態勢を取ったが、一向に出てくる気配がしない。

やがてその気配はスッと消え、ノエルは安心して歩き始めた。しばらく適当に歩いていると、大通りらしき場所に出た。

子供達が多いそこは、公園に繋がっているようだ。ノエルはボールを持った少女に着いて行く。公園のベンチで頭を冷やそうと思っているのだろう。

「春島……かな?」

気温がちょうど良いその島は、子供達が遊ぶのに適している。子供が多いのだろうか、元気に駆け回る子がたくさんだ。

しばらく歩いて行くと、大きな公園があった。遊具はたくさんあり、屋根がついており、テーブルなんかもある休憩所のような物まである。

テーブル付きのベンチに座り、ボールを持った少女を見やる。どうやらボールを取りに家に戻っていたらしい。母親と合流していた。

距離的にはそんなに離れてはいない。ノエルはそんな親子の会話に耳を傾けていた。

その頃の尾行組。先程のノエルの視線に震え上がっていた。

「何であの距離でわかるんだよ……」

「警戒心の塊みたいな視線だったよな……」

「これじゃバレるのも時間の問題だね。子供について行ったから公園っぽい所行ったとは思うんだけど……どうする?」

船に戻った方がいいのでは、と考えるイッカクとペンギンだが、シャチは辞めるつもりはないらしい。

目をキラキラさせながらノエルが向かった方向を指差す。

「バレないように追いかけようぜ!」


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