第5章 自覚と戸惑い
ふと目を開けると、ぼやけた視界に肌色と黒色が映った。寝ぼけたまま黒色に指先を伸ばし、なぞる。
パシッと手を掴まれ、指先を甘噛みされた。
「んにゃっ…………」
「何だ? 昨日の続き、して欲しいのか?」
「ッ⁉︎」
はっきりと目が覚めた。視界に映っていた肌色は、ローの胸板で、黒色はそこに刻まれたタトゥーだったのだ。
ノエルは何故こうなっているのかわかっていない。が、顔は真っ赤だ。やがてするりと手を絡められた。
「んっ、ロー……?」
ゆっくりとした動きにくすぐったく感じ、身をよじるも、ガッチリと腰をホールドされている。顔は鼻先がくっつきそうなほど近い。
「昨日は随分可愛かったなァ?」
「ふえ⁉︎」
まったくもって身に覚えがない。記憶を掘り返してみようとすると、腰にあった手がゆっくりと動き出した。
「ふうっ、あ」
「ほら、早くしろ。じゃないと続きしちまうぞ」
「んっ、ふわぁっ……」
だんだん背中を上っていく指先。くすぐったいのかぞわぞわするのか、わからなくなってきた頃、ローの指が首筋を辿った。
「あっ⁉︎ 紐が……!!」
チューブトップの紐がほどけているのを知り、ノエルの記憶はフラッシュバックした。
(そうだ、私…………酔っ払ってローに絡んで、耳舐められ…………っ!!)
ぽしゅっ! と音がなりそうな勢いで顔が真っ赤になるノエル。その様子を見ていたローはニヒルに笑い、彼女の額に口付けた。
「ちょっ、あの…………離して?」
「断る」
体を動かそうとしてみるが、体格差のせいか身長差のせいか、まったくもってビクともしない。それでも必死に抜け出そうとしているノエルをローはニヤニヤしながら見つめている。
(本当にこれどうしたらいいの⁉︎ 恥ずかしすぎてローの顔見れないのに、ドキドキして苦しいのに、何故か…………離れたくない。ずっとこのままでいいんじゃないかって思うのは…………どうしてなの?)
考え事をし始め、ボーッとしているノエルの額に、もう一度口付けたロー。
口をパクパクさせて言葉を失うノエル。涙目でキッとローを睨みつけてみるのだが、怖くないどころかむしろ逆効果である事を、彼女は理解していないらしい。
ローは再び口付けようとしたが、代わりに彼女の上に跨った。
「んなっ……!」