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死の外科医と四季姫

第5章 自覚と戸惑い


「知らなかったー、お酒ってこんなに美味しいものだったんだね!」

「ノエルちゃんって今いくつ? もう二十歳は過ぎてるよね?」

「うん、今22歳でローと同い年。お酒は、飲もうと思えばいつでも飲めたんだけど、お母さんと、私が二十歳になったら一緒に飲もうって約束してて。でも二十歳になる前に亡くなっちゃったから」

またしてもえぐえぐと泣き出す船員達。酒追加だあー! などと叫んでいるあたり、この酔っ払い達の収集はつかないだろう。明日全員が二日酔いになっているのがオチだ。

「それにしても美味しい」

一人上機嫌で酒も飲むノエル。すでに周りにはシードルの空き瓶が何本か転がっている。本人も船員達も、酔っ払っている事に気が付いていない。

「あれ? ろー、なんでここにいないの?」

終いには呂律も回らずシャチやペンギンに絡みに行く。普段とは違う妹の姿に彼らは戸惑いを隠せない。ねーえー、ろーはー? と言いながら酔ったイッカクを揺さぶるノエル。当のイッカクは、あはははは! と笑っている。絵面がおかしい。

「ノエルさんやノエルさんや、君のお探しの船長ならホラ、あっちにいるよ」

「ほんとらー、ありあとぺん!」

ぺん、と呼ばれたペンギンはデレデレしながら鼻血を出している。そんな相棒の姿を横目に見つつ、ちらりとノエルを見る。

「しゃーちぃ? どしたのー?」

言わずもがな鼻血が出た。酒が入ると少々幼くなるらしいノエルに、兄ーズは萌えに萌えている。不審者感満載だ。

「んー? わたし、ろーのところ、いってくるね」

翼を出してローのいる場所へ、フラフラと飛んでいくノエル。一人静かに飲んでいたローも、彼女の姿を見て少し驚いた。

「どうした……?」

ここ数日避けられていたのも忘れ、心配そうな目でノエルを見つめるロー。彼女はローと目が合った瞬間、顔を綻ばせた。

「ろー、だぁ」

隣にふわりと着地し、ローに擦り寄るノエル。ぎゅっと腕に抱きついたりと、とにかく甘えた行動をとっている。

「へへ、ろー、かまって?」

「ッ⁉︎」

ここ数日ローを避けていたのは自分だというのに、酔った彼女にはその自覚がないらしい。しばらくされるがままだったローだが、ついに我慢の限界が来たらしい。
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