第5章 自覚と戸惑い
「みんな絶対名前は知ってる海賊だよ。当ててみて!」
悪戯っ子のように笑うノエルにほんわかしながらも、酔った頭で必死に考える船員達。
「赤髪!」
「ビッグマム!」
「白ひげ!」
「四皇ばかりじゃない! でもそうだね、当たりはあったよ」
その言葉に心底びっくりする。何故四皇を友達と呼べるのか、と。そこにノエルの訂正が入る。友達がそこの船員なだけで、四皇本人が友達な訳ではないらしい。
「白ひげの船員だよ、友達」
「ハルタか? いや、イゾウ⁉︎」
「案外サッチとかか?」
「いや、マルコだろ」
「ジョズじゃね?」
みんな詳しいのね…………誰それ知らない。と内心思いつつ、ノエルは苦笑する。まだ、とても大事な人がいるじゃないか、二番隊の隊長の……
「エースでしょ」
「そう、すごいねイッカクちゃん! 正解! 私、エースと昔友達になったの」
「二番隊の…………」
「隊長〜⁉︎」
ギャーギャーと騒がしくなる甲板。その奥でローは一人静かに呑んでいる。これはまだ隣には行けないな、とノエルは思う。
「にしてもどうして白ひげの船員と友達なんだ?」
「他の隊員の名前言っても誰それみたいな顔してたのによ」
「バレてたか…………。昔エースはスペート海賊団って言う海賊団の船長をしていたの。その時四季島に来てくれてね。あれは……去年の話ね」
(出港から僅か一年で新世界入りしたらしいけど…………すごいなぁ、エース)
「すげえなエース!!」
「他は!! 他は!!」
「他の友達? そうねェ、あんまりいないけど、今日はエースだけね。楽しみがなくなっちゃうでしょ」
ブーイングが聞こえてくるが、無視するノエル。クスリと微笑んでみせると、顔を赤らめる船員達。そこに酔っ払ったイッカクが登場。
「飲んでる⁉︎ ノエルちゃん!!」
「あ、ごめん、私お酒飲んだ事なくて、まだ飲んではいないんだよね」
「じゃあ飲んでみよー!!」
「お、おー……?」
イッカクの勢いに流され、ジョッキに口をつけるノエル。初めて嗅ぐアルコールの香りにクラリとするも、すぐに甘いリンゴの香りがしてきた。恐る恐る飲んでみると、炭酸独特のパチパチとした感覚と、甘いリンゴの味がした。それと、微かなアルコール。
「美味しい………!」