第4章 芽生えた気持ち
「オイ、しっかりしろ! オイ!」
#ノエルの体に触れて気が付いた。その体は燃えるように熱い。ローの声が船内まで聞こえたのだろう、船員達が慌てて出てきた。
「どうしたんですか、船長!」
「ノエルが熱出した! ついでに怪我もだ!」
「ハァ⁉︎ ノエル何してんすか!」
慌てながらも、処置の準備をする船員達。ローは手早く外科の手当を済ませ、部屋のベッドに寝かせる。濡れたタオルを乗せてやると、ノエルは目を覚ました。その顔はぼんやりとしている。
「んぅ…………ここ」
「お前の部屋だ。熱あるんだ、起きるなよ」
「そうなん…………だ⁉︎」
ローの顔を見た瞬間、より一層顔を赤くさせたノエル。先程抱きしめられてから、ノエルはローの顔が見れないのだ。心臓がドクドクとうるさいくらいの音を立てる。
「オイどうした⁉︎」
「いや、あの…………こっち来ないで」
それは、ノエルが初めて口にした拒絶の言葉。それにローは少なからずショックを受けた。どうすればいいかわからず、伸ばしかけた手は、虚しく宙を彷徨った。
「船長〜、私ノエルちゃんの事見てるから、休んでなよ。もうこの島出ちゃうんでしょ?」
突然部屋の扉が開いて、イッカクが入ってきた。彼女はノエルのベッドに腰掛ける。
「イッカク……ああ、頼んだ」
ここは彼女達二人の部屋だ。それならイッカクに任せても大丈夫だろうと判断し、ローは部屋を後にした。ローがいなくなってから、イッカクは口を開く。
「ノエルちゃん、船長行っちゃったよ。だから布団から出ておいで?」
「うう……イッカクさん」
「あはは、さん付けするならちゃん付けしてよ!」
ね? と念押しされ、ノエルはおずおずとイッカクちゃん、と呼び直した。それに機嫌をよくした彼女は再びノエルに話しかける。だが、ノエルは布団から出てはこない。
「ノエルちゃん、船長の事嫌いになっちゃった?」
「そんなことない!」
ガバリと布団をめくり、ノエルが起き上がる。が、クラクラしてベッドに倒れ込んでしまった。
「わあ! 熱あるんだから寝てて寝てて!」
ごめん、ありがとう。そう言ってからノエルは自分の心境をぽつぽつと喋り始めた。