第4章 芽生えた気持ち
ローや船員達がノエルの心配をしている間、彼女は自分が住んでいた家を訪れていた。家は当然のように全焼し、跡形も無くなっていいる。唯一残されていたのが、地下へと続く鉄製の扉。少し歪んではいるが問題なく開くだろう。
ノエルはその扉に手を伸ばし、勢いよく開けた。思っていたよりも簡単に開き、身体が地下へと続く螺旋階段を転がっていく。ぎゃああああ、と叫びながらあちこちに擦り傷や打撲痕を作った。
やがて地面と激突。しばらくクラクラして動けなかったが、何とか立ち上がった。真っ白な壁が眼に映る。どうやらこの部屋だけは無事だったようだ。
「ここだけでも無事でよかった…………」
四季姫の家系しか入る事が許されていなかった地下室。ここは幼い頃からノエルの秘密基地でもあった。宝物やお金は全て、ここに保管していた。
思い入れのある物以外全て荷物に纏めていく。真っ白な部屋の奥には、一つの大きな石があった。それを一度見てしまえば、瞬く間に部屋は水色に見えてしまう程、石は純白だった。
近くにあった紙とペンを取り、その石の文字を写す。写し終えると、石の近くの本を数冊荷物に入れた。
「全財産は持った、お母さんが海賊から奪ったお宝も持った、写しと本も持った。思い出も…………持った! じゃあ、行きますか!」
行ってきます! と元気よく上を向く。そこには天井から吊るされた美しい翼が一枚があった。まるでノエルに行ってらっしゃいと伝えるかのように、ひらひらと独りでに踊る。抜けた羽が一枚舞い降りてきた。
ノエルはそれを見る事なく階段を上っていく。が、しかし。
「あは、重い……身体痛い」
先程身体をあれほど打ち付けたのだ。痛くない訳がない。引きずるように荷物を持ち、ヨロヨロと階段を上る。やっとの思いで地上に出たが、ここから船まで行くのだと思うとげんなりした。
「…………こういう時に羽は生えてくれない」
そう。あの翼は自分の意思で生やしたものではないのだ。早くコントロール出来るようにならねば、と意気込みながら荷物を持ち直した。歩き出そうとしたその瞬間。ノエルはローの腕の中にいた。
「え…………何で⁉︎」
「ったく、その怪我何処で作ってきた? せっかく治ったばっかりだっ……オイ⁉︎」
ノエルは顔を真っ赤にして気を失ってしまった。