第4章 芽生えた気持ち
ノエルが泣き止むと雨も止んだ。
「慈悲なき風(ミゼリコルド・パー・ヴァン)」
何処からともなく風が吹いて、真っ二つになった軍艦を海へと押し出す。一隻とはいえ、海軍は軍艦ごと全滅だ。
それを平然とやってのけたノエルに、ハート全員がこう思ったそう。
(絶対に、ノエルだけは怒らせちゃいけない!!)
それは、ローも同じだったようで。少しデジャヴを感じてはいたが。
「ロー、みんなも、ありがとね。私のワガママに付き合ってくれて」
照れ臭そうに笑って言うと、船員達は何言ってんだよ、仲間だろ? や、こんなのワガママの内に入らないよ! などと声をかけてくれた。
再び泣きそうになったノエルだった。
ハートの海賊団の四季島での冒険はここまでかと思われた。しかし、ノエルが行きたい所があると、一人島の中に行ってしまった。ロー達は船の近くで待つ事に。
「いやぁ〜焦った焦った。まさかノエルの言葉通りに身体が動かなくなるなんてな」
「ああ。しかもあれ、海軍の少佐だろ? そいつまで言う事きかせてた。四季姫ってのはすげーんだな」
「にしてもノエルちゃんの羽…………すごかったな」
「綺麗だったよねー! この羽とはまた違って!」
先程の水晶はイッカクが預かっているようだ。中の羽はノエルのとはまた違った美しさを放っている。
(シキシキの実、か……)
まるで季節を操る女王のようだった。とローは思う。が、すぐに女王よりも、神に近かったな、と思い直した。
神など信じていなかったロー。だが、その末裔が目の前にいたのだ。羽ごと彼女を抱きしめたのだ。疑えるはずがない。
初めて口にした彼女の名前。あの時、咄嗟だったがするりと口から旅立っていった。
「…………ノエル」
ボソリと、誰にも聞こえないように呟く。心が温かくなるような気がした。ローの大好きな人の名前を初めて呼んだ時のように。
(コラさん…………おれはアイツを救ってやれるかな)
大好きな人を思い浮かべながら空を仰ぐ。
「心配すんな! ローなら何だってできるさ! 自分を信じろよ!」
今は亡きコラさんの声が聞こえた気がした。
「愛してるぜ!」