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死の外科医と四季姫

第4章 芽生えた気持ち


(結局、服まで買ってもらっちゃったな……)

空がオレンジ色に染まり、その中に群青色が混じり始めた頃、二人は船に帰ってきた。ノエルの手にはいくつかの紙袋が握られており、全て有名ブランドだ。

最初こそ、その値段の高さに縮こまっていたノエルだったが、ローが全然気にしないので、彼女も気にしない事にした。

「ロー、今日は本当にありがとう! 私ばっかり買ってもらっちゃったけど、よかったの? もっと行きたい所とかあったんじゃ……」

「いい。お前が楽しかったならそれでいいんだ」

フッと笑い、ノエルの頭を一撫でして先に船に入っていくロー。ぽかんとその背中を見つめていたが、やがてノエルも嬉しそうに笑いながら、船に入っていった。

部屋のクローゼットに服を入れると、もう中は服でいっぱいになってしまった。しばらくは買わなくていいだろう。クローゼットに設置されている鏡に、自分の耳を写す。

「ふふっ」

ローにもらったピアスが小さく揺れた。シンプルながらも彼女によく似合う。

ノエルは鼻歌交じりで船内を歩く。一人にこにこしながら歩く人は、一般的に考えれば変な人だが、この船ではその常識は通用しない。むしろ「ノエルちゃん、いい事あったんだな〜」で済まされる。

「おっ、ノエルいい事あったのかー? すっごい嬉しそうだな!」

「あ、シャチ! そうなの聞いて! 見てこれ、ローが勝ってくれたの! 本も買ってくれたし、服も買ってもらっちゃった。えへへ、いーでしょー」

ほら、と見せられたピアス。本も買って、のくだりからシャチは聞いていない。ノエルの耳に釘付けだ。

(え、イヤリ…………じゃない! 穴⁉︎ 穴空いてる⁉︎)

「ペンギンンンンン‼︎‼︎」

ダッと走って行ってしまったシャチ。その後すぐにペンギンを連れてきた。それはものすごいスピードだった。

「いきなり何だよシャチ…………」

最初は悪態を吐いてたペンギンも、ノエルのピアスに気付いて、声にならない悲鳴をあげた。

「なっ、ななななな! ノエルちゃん、一体どうしちゃったんだ! 何で、そんな……! ピアスなんてッ!!」

「いや元々空いてたし…………いいじゃん、可愛いし」

若干呆れ気味で言うと、反抗期だァァァァァ! と騒がれた。
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