第4章 芽生えた気持ち
しばらく街をフラフラと歩いていた二人。広場のような場所に出ると、噴水を中心に色々な店があった。中には屋台もある。
「ふふ、お腹空いちゃった。もうお昼だもんね〜」
笑う彼女に昼食にしようと伝えると、やった、と喜んだ。キョロキョロと辺りを見渡し、ある店を見た瞬間、目を輝かせた。
「あれ食べたい……!」
彼女が指差した先にあるのは、苺と生クリームのサンドウィッチを売っている店。お昼前だが、若い女性を中心に何人かが並んでいる。
「買うか」
「ありがと〜」
わくわくしながら向かうノエルは、やはり自分と同い年には見えなかった。好物なのだろう、イチゴサンドの魅力をつらつらと語っている。パン嫌いのローも、彼女の話には耳を傾けていた。
十数分並ぶと、ようやく購入する事が出来た。ローも近くに売っていたおにぎりをいくらか買い、噴水近くのベンチに座って食べる事にした。
「いただきまーす!」
ノエルは嬉しそうにイチゴサンドにかぶりつく。ふわふわとした甘いクリームに、甘酸っぱいイチゴがよく合っている。幸せだと言いたげに、至福の表情でサンドウィッチを噛みしめる。
「美味いか?」
「とっても! あのね、もうクリームがフワッフワで、イチゴが甘くて美味しいの!」
にこにこと幸せそうに食べる彼女を見つめる輩がここにも。ノエルは、本人の自覚こそないが、とても綺麗な人だ。
とろりと溶けてしまいそうなほど大きく、少しタレ気味の瞳。それを縁取る長い睫毛は涙袋に影を落としている。同じくタレ気味の形のいい眉。筋の通った鼻は高く、綺麗な線を描いている。ふっくらとした唇は桜色で艶を帯びており、透き通るような白い肌によく映えている。
何より、アメジストの瞳は何者をも魅了していた。
男性はおろか、女性ですら彼女に見惚れてしまっている。大方、声をかけようか迷っているのだろう。
ローはそれにいち早く気が付き、どうすべきか考え、ノエルの唇の端に生クリームがついているのを見つけた。
「オイ、こっち向け」
彼女の顎に手をかけ、無理矢理こちらを向かせる。きょとんとしている彼女の唇に顔を寄せて
「んあっ⁉︎」
付いていた生クリームを舐めた。甘いクリームに、甘い声。ローはちらりと彼らの方を見る。中々立退かないため、もう一度唇を舐めた。
「ん、うっ」