第4章 芽生えた気持ち
「ごめんなさい、ロー。お待たせしちゃった」
「いや、別にそんなに待ってな…………」
ノエルの方を向いたロー。一瞬、時間が止まったかと思った。そこにいたのは、普段とは違い軽く着飾ったノエル。可愛い以外の感想が出てこなかった。
「ほら行くぞ」
「うん!」
照れ隠しのために帽子を深く被り直し、歩き出す。が、突然ローの方がコンパスが長いためすぐに差が開く。必死に自分の横を歩くノエルに気が付いて、少しスピードを緩めた。
それに気付いたノエルは嬉しそうに微笑んだ。身長、高いなぁ。足長いなぁ。そんな事を思いながら。
「ところでロー、今日はどうする予定なの?」
特にローは考えてなかった。ただ連れ出す事しか考えておらず、どうすべきかと考えて、新しい医学書が欲しかった事を思い出した。
「本屋に行く。医学書が欲しいからな」
「りょーかい! 私も本見たいな〜。四季島は鎖国してると言っても過言じゃないからさ、全然本とかないんだよね」
まあ四季島の本はたくさん出版されてるけど。そう言うノエルの話を、ローは相槌を打ちながら聞いていた。が、意識というか目線は、ノエルを見つめている他の男達に向けられていた。睨め付けるように見ると、そそくさと立ち退いていく。
「あっ、ロー! 本屋さんあったよ!」
ノエルは何の気なしになしにローの腕を掴み、本屋へと引っ張っていく。今の彼女には自分以外は見えていない。それに気分を良くし、ローは本屋で医学書を漁りまくった。
どれくらい本を選んでいただろう。ふと時計を見ると、ゆうに2時間は過ぎていた。
隣にノエルの姿はない。焦って店内を見渡す。そんなに広くはなかったので、すぐに彼女は見つかった。一冊の本を、興味深そうに読んでいる。ページはすでに半分を超えており、どれだけ待たせてしまったかが伺える。
「あ、選び終わったの?」
ローが隣に行くと、本を閉じ笑顔を向ける。棚に戻そうとした本を手に取り、ローは会計に向かう。
「それ……買ってくれるの?」
「ああ、待たせた詫びだ」
読んでいた彼女の顔はとても楽しそうだった。タイトルをちらりと見ると、恋愛小説だとわかった。今度、感想でも聞いてみるか。らしくない事を思いながら、本屋を出た。