第4章 芽生えた気持ち
朝、シャワーを浴びてペンギンに髪を拭いてもらうノエル。ここまではいつも通りだ。しかし、今朝からはそこにシャチが加わり、彼女の髪の手入れをしている。
少々異様な光景だが、ノエルは昨日の時点で慣れたらしい。慣れとは恐ろしいものだ。
「ふわっふわだな〜。オイルとかつけてんの?」
「ううん、特に何もしてないよ?」
「へー……。じゃあさ、伸ばしたりはしないわけ?」
「伸ばそうとは思ってるよー」
肩ほどまであるノエルの髪を丁寧にとかすシャチ。手や腕のマッサージをするペンギン。誰の目から見ても明らかに、昨日より溺愛に拍車がかかっている。
「オイ…………何だあれは」
「あはは、昨日よりも溺愛されてますね〜。私も混ざりたい…………」
そう言うイッカクを横目で見つつ、ノエルの元に向かうロー。ノエルはローに気付くと、パアッと花が咲くような笑みを浮かべた。
「ロー! おはよう!」
それを嬉しく思いつつも、ああ、という素っ気ない返事しか出来ない。が、ノエルは変わらず満面の笑みだ。
「今日は予定あんのか?」
「特にないよー。街を適当にぶらぶらしようかなとは思ってたけど」
「ならちょうどいい、買い物に付き合え」
「いいよ! 色々見たりしたかったんだ〜!」
用意するから待っててね、と言い部屋に戻るノエル。ローは先に外に出ているらしく、愛刀である鬼哭を持って行ってしまった。
そんな彼女らをシャチ達はにこやかに見送る。三人とも晴れやかな表情だ。
「髪拭くのと髪の手入れとマッサージ以外に何か残ってる役職なーい?」
イッカクがそう尋ねると、うーんと悩む二人。しばらく押し黙っていたが、やがてシャチが口を開いた。
「なくね?」
「おい!」
ビシッと突っ込むイッカクに、まあ待てと宥めるペンギン。シャチ曰く、イッカクはノエルの親友なのだから、おれらと同じ事をする必要はない、らしい。
親友、と言う言葉に機嫌が良くなったイッカク。
「フフーン、じゃあノエルちゃんに船長との話聞きまくっちゃうもんね〜!!」
コイバナ出来る〜、と楽しそうに部屋に戻るイッカク。どうやらノエルにヘアメイクを施すそうだ。それから、軽くメイクも。
それらを五分で行った彼女は、ノエルに魔法使いだと思われたらしい。