第3章 新しい日常
「お日様だー!」
昨日は丸一日潜水していたので、本日は海上に出たポーラータング号。幸い、足の捻挫は軽かったノエルは甲板で大はしゃぎだ。
「この間も見れたけど、まともに見るのは1ヶ月ぶりくらい? わーい!」
キラキラとした陽光が彼女の周りを照らしている。その光の粒子は踊っているように見えた。否、踊っていた。ノエルが能力で踊らせているのだ。
「太陽如きであんなに喜んでくれるなら、俺は喜んで毎日でも船浮上させるわ」
嬉しそうにノエルを見つめるペンギン。帽子のつばで見えないが、きっと妹を溺愛する兄のような目なのだろう。
黙ってノエルを見つめるロー。いつもなら部屋で本を読んでいるはずなのだが、珍しい。そんなローは彼女が海軍で受けた扱いを察して、いつか報復してやろうと企んでいた。
「えいやっ」
いつの間にか来ていたイッカクが、彼女にホースの水をかける。海水ではないが、少しびっくりする。
「イッカクさん⁉︎ びっくりしたぁ」
甲板の掃除をするのだろう。イッカクはツナギの上をはだけさせ、中に着ているタンクトップが丸見えだった。
「一緒に掃除しよ! ノエルちゃん!」
「うん!」
ブラシを受け取り、イッカクが水を撒いた所から掃除していく。一通り掃除し終えてから、また水を撒く。その際二人はじゃれ合うように水を掛け合った。
遊び終え、甲板が乾くとシャチやペンギン、その他の男達が筋トレを始める。
ローとて例外ではなかった。ローの能力は体力を使う。少しでも伸ばしておかなければならないのだ。
「お二人さん、ちょっと手伝ってー」
「はーいよ」
慣れているイッカクと違い、ノエルは何の事だかわからない。頭の中いっぱいにクエスチョンマークを浮かべていると、ペンギンが説明してくれた。
「じゃあ腕立て伏せしてるみんなの背中に乗ればいいの?」
「そういう事。頼めるか?」
「うん!」
うつ伏せに寝転ぶペンギンの背中によじ登るノエル。人の背中に乗る経験などなかったため、ペンギンにしがみついている。
「お、重くない……?」
「軽すぎるくらいだけど、重くないと意味ないだろ」
「そ、そうだね……」
緊張しているのか怖いのか、その声音は震えている。それに気付いたペンギンはフッと笑った。