第3章 新しい日常
「能力の範囲広ェな」
「四季姫としての能力もあると思うよ。脱出した時に空けた穴から海水が溢れて、スクリーン消えちゃったんだと思う」
そのまま海の底まで沈んじゃえばよかったのにね。そう笑顔で言う彼女に、ローは少し恐怖を覚えた。あまりノエルを怒らせないようにしよう、と。
「まだ言ってなかったが、このポーラータング号は潜水艦だ。海軍や他の海賊達を避けられる」
海の中が見渡せる窓辺に立つと、ノエルが歓声を上げた。それを見たローは、誇らしいような気持ちになった。
「すごいね! セルフ水族館!」
「いるのは海王類とかだけどな」
「それでもすごいよ!」
キャッキャとはしゃぐ彼女はまるで、子供のようだ。これで自分より年下説がかなり色濃くなってきた。ローは確認のため、ノエルに年齢を聞く事にした。
「あんまり女性に年齢聞いちゃいけないんだよ? 私は気にしないけどさ。私ね、今年で22歳! 多分ローと同い年ぐらいだと思うよ」
当然ローはびっくりした。20前後だと思っていたノエルが、まさか自分と同い年だったとは。しかも彼女は同い年だと思っているとは。
「今見えないって思ってるでしょー。いーもん、どーせ私は子供っぽいし」
「いや、思ってない。思ってないから安心しろ…………?」
混乱して、何故か疑問形になるロー。そんなローを見てノエルは面白そうに笑っている。
この光景を見ていた船員は後に語る。ペンギンとは兄妹にしか見えないけど、キャプテンとなら恋人同士に見えた、と。
それを言ったのは、何を隠そうシャチである。実は結構近くにシャチがいるのだが、二人とも気付いていない。
(二人ともいい雰囲気だよな。でも絶対キャプテン自覚してないだろ。ノエルも大変な人に好かれたな。まあ、他の奴が手ェ出したらペンギンに殺されるか)
今はここにいない彼女の義兄的存在を思い出す。もし仮にノエルに恋人ができたとしたら、自分を倒せる奴にしろ! などと言いそうだ。
(あ、イッカクもか)
イッカクは義姉的存在ではないが、ノエルの親友だ。絶対に相手は厳選するだろう。自分が手を出そうものなら海王類の餌にされかねない。
(まあ、ノエル可愛いけど、俺的にも可愛い妹なんだよなぁ)
下心より義兄心の方が強いシャチだった。