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死の外科医と四季姫

第3章 新しい日常


「キャプテン!! 海軍の船が出港してすぐに転覆したらしく、港は大騒ぎです! しかも四季姫がいないと大混乱を起こしています!」

シャチとペンギン、それにベポが入ってきた。三人共全速力で帰ってきたらしく、息が切れている。

「すぐに出航するぞ! 街に出てるやつら全員に戻ってくるように伝えろ!」

アイアイ、キャプテン! と返事をして、彼らは医務室を後にした。その光景を見たノエルは自分のせいで、と落ち込む。そんな姿を見たローはノエルの頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜるように撫でた。

「お前のせいじゃない。仲間を守るのはおれの役目だ、気にすんな」

でも、と言い淀むノエル。ローは困ったように笑い、もう一度頭を撫でた。今度は、優しく。

「何でもかんでも背負い込み過ぎなんだよ、少しは頼れ。シャチとペンギンを盾にして助かるぐらいの覚悟でいろ」

「そんな事出来ないよ! 私、みんなの事守りたい!」

「おれらだって同じ気持ちだ」

その言葉でハッとする。気付いた彼女はありがとう、と呟いた。ローは何も言わずに、ぐしゃぐしゃになったノエルの髪を梳いた。
絡まっていたふわふわの髪が元に戻っていく。

その時ローは、彼女の耳にピアスの穴が空いている事に気が付いた。だが、その穴にピアスは付いていない。

(意外だ、まさか空けてるとはな)

「ピアスはどうした?」

その言葉を聞きノエルは苦笑いをしながら、ピアスがない経緯を話す。

「四季島で落としちゃったみたいで。今頃きっと火の中だよ」

まだ火は消えてないんだって。そう言う彼女の顔は、口角は上がっているのに、泣いているように見えた。

「キャプテン! 全員揃いました! 出航します!」

「くれぐれも海軍の奴らに見つかるなよ!」

ローはノエルを抱き上げ、船内を歩き出す。実はまだポーラータング号が潜水艦だと言っていない。それを知った彼女の反応が見たい、と少しワクワクしている。

「そういや、何で海兵達は一晩中お前がいない事に気が付かなかったんだ?」

それは素朴な疑問だった。誰も気付いていなかったのなら、警備がザルすぎる。

「ローに海楼石外してもらった時にね、私がいた牢屋に霧のスクリーンを出したの。それで、私がいるように見せてたから、誰も気が付かなかったんじゃないかな」
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