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死の外科医と四季姫

第3章 新しい日常


ピシリと音が聞こえるほどに固まる。その隙を見てノエルは逃げ出した。診察台を降り、イッカクの元へ下着を貰いに向かう。
一応、ローへの報告も忘れずに。

パタパタと走っていく彼女は、捻った足の痛みは今は忘れている。

(何今の声……! 自分の声じゃないみたいだった…………)

ローは診察台に体を預けるように蹲り、顔を腕で隠した。隠しきれていないその耳元はわかりやすいほどに真っ赤だ。

「着ろよバカ…………っつーか、着てないなら先に言え」

聞かなかったのはローであるし、先程全裸だった時にパーカーを着たのを見たのだが、忘れているらしい。

本当に、自分はどうしてしまったのか。

(ガキの目に見惚れたり、その体に欲情したり…………わけわかんねぇよ)

歳は聞いていないが、確実に自分より年下だろう女を抱きたいと思ってしまうとは、夢にも思っていなかった。しかも、出会ってまだ二日目だ。あれほど警戒していたというのに、今ではその欠片もない。

はぁ、と昨日から何回目かもわからないため息を吐くローだった。

ノエルはイッカクの元に行き、事情を説明していた。イッカクは未使用の下着をくれたうえに、チューブトップのようなキャミソールに白い短パンまでくれた。

「イッカクさん、本当にありがとう! 今度何かお返し……あ、お金ない! 海賊いたら狩ればいいのかな?」

「発想が物騒! あはは、気にしなくていーよノエルちゃん!」

海賊らしいねー、と言うイッカクと笑い合い、再び医務室に戻った。戻る途中で足首の痛みを思い出し、しばらく時間がかかったが。

「遅い」

ローは文句を言っているが、内心では落ち着く時間があったのでホッとしている。顔は先程とは打って変わって平静だ。

「じゃあ手当てするぞ」

「うん、お願いします」

自分からパーカーを脱ぎ、怪我している部分を晒す。その際、霜を溶かす事も忘れない。軽い怪我は霜のおかげで治ってきてはいるが、まだまだ治っていない怪我ばかりだ。

「海軍の奴らにやられたのか」

手当てがすべて終わり、労わるように包帯の上から傷を撫でるロー。その手付きはとても優しく、ノエルは安心している。彼女もまた、警戒心など欠片もなかった。

「反抗したらちょっとね…………新兵さんにやられちゃって」

その時、ドアが勢いよく開いた。
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