第3章 新しい日常
しかし、イッカクさん呼びの方がしっくりくるらしく、呼び方は変わらなかった。
「ノエルちゃん、お風呂入ってきなよ! ちょっと所々汚れてる」
「えっ、恥ずかしい……。ごめんなさい」
「いいよいいよ、おいで! お風呂はこっち!」
そう言って、ノエルの手を取り引っ張って行ってしまった。案内をしていたローは、少し面白くなかったが、首を傾げてすぐに部屋に戻って行った。
取り残されたペンギンとベポはシャチを哀れむように見ていた。
一方その頃風呂場ではイッカクがノエルに風呂の説明をしていた。一通りの説明を終えると、イッカクはごゆっくり〜と、手を振り出て行った。
ノエルは服を脱いでから、包帯や絆創膏を外していく。包帯の下にはまだ痛々しい傷が残っていた。
傷口に霜を降ろしてから、シャワーを浴び始めた。
(早めに上がらないとね)
サッと体を洗い、髪を洗っていく。今はイッカクのシャンプーを借りているが、いずれ自分の分を買わなければ、と思う。
(ふあー、さっぱりしたぁー)
少しシャワーで温まってから出た。タオルはイッカクが渡してくれたのだが、着替えがない。
その事に気が付いたはいいが、どうすればいいかわからず狼狽える。
「オイ、着替え忘れて…………」
その時だった。着替えを持ってきたローが、いきなり入ってきたのは。
ノエルは当然全裸。俗に言うラッキースケベ。ローは目を、これでもかと言うほど見開いた。
「⁉︎」
二人とも顔がみるみる真っ赤にる。
ノエルはタオルで体を隠しながら、ローに右腕を向けた。
「聖氷剣(ホーリーソード)!!!」
人一人分の大きさはあるだろう氷の剣が現れ、ローに直撃した。
「ぐぶふぉっ!」
ローは廊下まで吹き飛ばされ、壁に激突した。とてつもない威力である。
誰かが走ってくる音が聞こえ、ノエルはローの手から離れた、大きめの黒いパーカーを掴み、急いで着替えた。
そしてその後逃げるようにその場を去った。
バタバタと走って風呂場までやってきたのはイッカクだった。
「あー……キャプテンが何したのか理解した」
彼女は現場を見て瞬時に状況を理解したようだ。ローの前に仁王立ちになり、説教を始める。
「乙女のお風呂上がりを覗くなんて言語道断よ!!」
その説教は1時間ほど続いたとか。